2014 Fiscal Year Research-status Report
世紀転換期の英国における黄禍論とその図像に関する比較文学的研究
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25370413
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 順光 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (80334613)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ディキンソン / アシュトン=ガトキン / 岡倉覚三 / 吉田健一 / 大英帝国プディング / グルチャラン・シン / 神智学 / 蛸 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の成果は、3件の論文、5件の口頭発表(邦語3英語2)、1件の書評、1件のDVD翻訳監修、1件の一般向け講演、2件の新聞記事である。 当初の予定通り、関連資料を購入し、日英の公文書館・各種図書館を調査することで黄禍論に関する図像の往還を明らかに出来た。 その成果として、ロシアの膨張の象徴として描かれた蛸が19世紀後半にアジア系移民の脅威を示す図像として使用され、それが日本でも受容されたことを指摘した(口頭発表5)。次に、反日英同盟の立場からアシュトン=ガトキンによって書かれた小説『キモノ』(1921)について、外交文書を参照することにより、モデルの一人が稲・ブリンクリーであることとその文脈が判明した(口頭発表4)。 ディキンソンについては、中国人の立場から欧米の帝国主義を批判した『中国人からの手紙』が、岡倉覚三やR・タゴールによって実際の中国の知識人が書いたものと誤解されたことがわかった。こうしてディキンソンが期せずしてアジア主義的言説の原型を作った点については北京で発表したほか(口頭発表3)、吉田健一のケンブリッジでの師としての側面を増補して論文にまとめた(論文3)。こうしたアジア主義的言説が物語へと転用された例として山田長政伝説に注目し、明治時代にポカホンタス伝説の紹介とともに異人種間ロマンスへと変化して発展していったことを指摘した(論文1)。一方、アジア主義をめぐる日英の交錯の一例として、来日して柳宗悦やバーナード・リーチとの交流から朝鮮半島に渡って浅川巧に会い、神智学協会と我楽多宗の一員ともなったグルチャラン・シンについて、その活動と陶芸を発掘した(論文2)。 書評では、野口米次郎がシャノン宅で大英美術館に寄贈される前の春画を見せてもらったこと、ウェルズの『宇宙戦争』のタコ型火星人が翻訳や再刊の際に北斎のタコの春画と習合していったことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りに資料購入と調査を進められ、昨年度に発表した内容に加え、当初の予定以上の論文を刊行できたので。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、日英で資料を調査し、結果に応じて、適宜、資料を購入する。それらをふまえて、論文および口頭発表を準備する。
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Research Products
(13 results)