2015 Fiscal Year Annual Research Report
世紀転換期の英国における黄禍論とその図像に関する比較文学的研究
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25370413
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 順光 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (80334613)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日英同盟 / 春画 / 神智学 / 山田長政 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の成果は、1件の編著(邦文・英文でそれぞれ寄稿)、2件の論文、6件の口頭発表(邦語4・英語2)、2件の新聞記事、1件の共著記事である。 当初の予定通り、関連資料を購入し、内外の公文書・図書館・美術館を調査することで、黄禍論とその図像に関する日英の往還の一端を明らかに出来た。具体的には初年度、次年度で口頭発表した成果に基づき、編著のCaricatures and Cartoons, 1890-1905(2015)において、SteadのReview of Reviewsにみる風刺漫画コーナーを整理して復刻し、その意義と重要性を邦文と英文の解説で指摘した。その際に、黄禍論の象徴であった蛸が、英国の風刺画を転用することで、ロシアの南下を警戒する「滑稽欧亜外交地図」へと逆用され、それがReview of Reviewsによって掲載されたことが判明した。日本の方でも、ステッドに取材した水田南陽あたりから、Review of Reviewsに掲載された日英同盟の風刺画が有名な「火中の栗」として紹介された可能性を指摘した。 関連して、蛸が排中移民運動や黄禍論に援用された経緯には、木村蒹葭堂の『山海名産図会』にみる滑川の大ダコや北斎の「喜能会之故真通」にみる春画の紹介があったことを、国際シンポジウムほかで報告した。 黄禍論的な言説への反作用として、ジェイムズ・カズンズによる神智学の汎アジア的なネットワーク形成が日本のアジア主義と呼応した経緯を発表したほか、日本の陶業に学んだインドのグルチャラン・シンによる独自のネットワークについて論考を執筆した。 一方、日本のアジア主義が引き起こした波紋として、山田長政のアジア主義的な伝説の流布と、それがオーストラリアで日本脅威論の一環で長政上陸伝説が発生した経緯を論文として発表した。
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Research Products
(14 results)