2014 Fiscal Year Research-status Report
世界文学に見られる離散をめぐる、エクリチュールのあり方の統合的研究
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25370417
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
越川 芳明 明治大学, 文学部, 教授 (40143953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
合田 正人 明治大学, 文学部, 教授 (60170445)
土屋 勝彦 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (90135278)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 離散(ディアスポラ) / クレオール / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
各研究者が現地調査をおこない、現地の作家、研究者、思想家と意見の擦り合わせをして、知見を深めた。 代表者、越川芳明は、8月に1カ月キューバのハバナに滞在し、アフロ信仰サンテリアの司祭ババラウォの修行「クチジョ(生贄を殺すナイフの意)」の実践と調査、「イファ」占いと「エボ」と呼ばれる厄払いの方法の調査をおこなった。口頭による成果としては、「アフロ的文脈で読む『老人と海』」と題して、日本ヘミングウェイ協会シンポジウム「訪玖研究者によるヘミングウェイ」(2014年12月、関西学院大学)で発表した。 分担者、合田正人の口頭メディアの成果としては、「ハンス・ヨナスの生命哲学と心身問題」と題して、京都ユダヤ思想学会第七回大会(2014年6月、関西大学)で研究発表、「「「肉」と「器官なき身体」」と題して、メルロ=ポンティサークル第20回大会(2014年9月、大阪大学人間科学学部)で講演、「縁から縁――ジャック・デリダとジル・ドゥルーズ」と題して、「ジャック・デリダ没後10年記念シンポジウム」(2014年11月私立大学戦略的基盤形成支援事業、早稲田大学文化構想学部)で講演をおこなった。また活字メディアでの成果としては、「レヴィナスとラカン――スピノザの徴しもとに」(『思想』岩波書店、2014年、4288-308頁)、『思想史の名脇役たち』(河出書房新社、2014年6月、288頁)を刊行した。 分担者、土屋勝彦は「Lydia Mischkulnig」『人間文化研究』23号(2015年3月、pp.79-86)、「Ilma Rakusa」『人間文化研究』21号(2014年7月、pp.61-68)、「Ann Cotten」『人間文化研究』21号(2014年7月、pp.43-60)、「Terezia Mora」『人間文化研究』22号(2014年12月、pp.149-151)など、インタビューを刊行。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標は、平成25年度の文献調査で得られた知見をもとに、各研究者が現地調査(作家・思想家とのインタビュー、フィールド調査)をおこなうというものであった。 具体的には(1)現地調査 ①作家・思想家とのインタビュー。実際に活発に執筆出版活動をしている作家や思想家らと面談し、疎外と同化の狭間で揺れ動く複数文化のアイデンティティ形成をめぐって、聞き取り調査をする。②フィールド調査。現地の研究者との討議や作家との聞き取り調査のあとに、実際に現地に赴き、作品の背景となっている地区(ベルリンのクロイツベルク、ハバナのマリアナオなど)での離散の民の営み(故郷から持ち込んだ生活様式、信仰様式など)を研究者自身が調査確認する。(2)分析。①作家とのインタビュー関して、テープおこしをおこない、文字資料として記録に残す。肉声・映像もビデオカメラやボイスレコーダーを使って、デジタルデータとして保存する。資料分析にあたり、文字資料だけでなく、映像資料も同時に用い、入念に分析する。②フィールド調査から得られた情報に関して、学術的な知見を踏まえ、研究者独自の視点から分析する。(3)報告会。12月に発表会をおこなう。「離散の歴史的な意味と言語的混淆特質をめぐって」。ゲスト講師として外部から講師を招聘して、知見を得る。 以上の目標に対して、すべての項目で、順調に研究を進めることができた。とりわけ、私たちが重要視していた(3)の研究者間の研究の統合、擦り合わせであるが、12月に、三名の外国人研究者を招聘して、英語による、離散と世界文学をめぐる国際シンポジウム「Creating the World Literature : Diaspora, Trans-ethnicity, Language Struggle」をひらいて、知見をひろめ、かつ深くお互いに意見交換することができたのが大きな成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の目標は、「研究の統合」である。 (1)最終的な検討①研究者の個別発表および比較検討を通じて、初年度、二年度に暫定的に共有した離散(ディアスポラ)の概念を再度検討する。②二年度にテープおこしをおこない、文字資料として記録に残したインタビューやフィールド調査にかんして、肉声・映像もビデオカメラやボイスレコーダーを使って、デジタルデータとして保存してあるが、入念に分析した記録をお互いに知らせ、発表して、知見や意見の交換をおこなう。③さらに離散が加速し、多文化の共存する現代社会を分析する際に必要となると思われる、非文字データと文字データを統合する特異な方法論(研究手法)をも同時に検討する。 (2)報告会など。最終年度には、各研究者間で、メール、研究会、講演会などを通じて頻繁に意見交換をおこなう。とりわけ、12月には明治大学駿河台キャンパスにて、「離散 その歴史的な特異性」をめぐって、外部から講師を招聘して、ひろく一般に公開した講演会(シンポジウム)をひらく。研究者間で意見交換をおこなうだけでなく、一般社会にも知見をひろめることにする。そのため外部からの講師としては、ディアスポラの作家・詩人・著述家を招聘し、作品の朗読、具体的な体験談、ディアスポラへのユニークな提言などをおこなってもらう。(3)成果の公表。報告会やシンポジウムなどの内容を積極的に公表し、年度末に、越川、合田、土屋、その他のシンポジウムの参加者が寄稿する冊子を刊行し、本研究の最終報告とする。さらに、本研究は現代社会と密接につながっているため、在日外国人の研究者、移民・難民の支援団体とも連携をはかり、移民・難民にかんする政策に示唆を与えたい。
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Causes of Carryover |
外国語文献・資料の翻訳を外部に委託するさいの翻訳料が少しだけ余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、これを同じ使途目的で使用したい。
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