2015 Fiscal Year Research-status Report
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25370431
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
越智 正男 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (50324835)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 類別詞 / 日本語 / 中国語 / 否定極性 / 数量詞遊離 / 空主要部 / 名詞句 |
Outline of Annual Research Achievements |
A. 研究概要 本年度は昨年度の研究を発展させる形で、類別詞表現を用いた否定極性(あるいは否定一致)表現の統語分析を行った。これは数詞の「1」と類別詞の組み合わせが「最小化詞(minimizer)」として機能する場合の類別詞表現のことであるが、本年度も前置型最小化詞(例:「1匹の虫も見なかった」)、後置型最小化詞(例:「虫1匹見なかった」)及び遊離型最小化詞(例:「虫を1匹も見なかった」)の統語と意味に関する調査を行った。昨年度は後置型の最小化詞に音形のないとりたて詞が生起している旨の仮説を立て、さらにその分布を英語の空補文標識の分布になぞらえて分析したが、本年度はこの仮説の検証のために、(1)日本語や英語における空主要部の認可条件及び(2)上述の3種類の最小化詞の統語的分布に関する調査、の2点を中心に研究を遂行した。 B. 研究成果 (1)に関しては空主要部の分布を統語と音韻のインターフェイスの観点から探るという方向性が浮上してきた。これは、最小化詞表現における名詞句削除(NP deletion)に関するデータに基づくものである。 (2)に関しては、前置型最小化詞が項として生起する場合と付加詞として生起する場合の両方が認められる(つまり、前置型最小化詞を含む文は構造的に曖昧である場合がある)のに対して、後置型最小化詞及び遊離型最小化詞の分布は付加詞の位置に限定されているという結果が出た(従って、後置型最小化詞に関する昨年度の仮説の妥当性が概ね確認されたと言える)。さらに、3種類の最小化詞構文の解釈の違いがこのような分布の違いより導き出せるという趣旨の提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の(新たな)研究課題についてさらなる検証が必要になったためである。 1. 本研究の仮説によれば、後置型類別詞表現の派生は類別詞主要部が補部として選択するNPの名詞領域周縁部への移動を常に含んでいることになる。この点は最小化詞における無音形のとりたて詞(無音形の「も」)の認可に関する本研究の提案により裏付けられたと考えられる。その一方で、このNP移動の駆動力に関する問題が残されたままである。本年度は、「移動自体は随意的であるが、移動が適用されない派生は数詞と類別詞の隣接条件が満たされないために排除される」という趣旨の仮説を構築した。しかしその検証が課題として残っている。 2. 本研究の成果を受けて昨年度中に発表された韓国語研究者による類別詞表現の統語研究によって、日本語と韓国語の前置型類別詞と前置型全称量化子の共起関係に関して興味深い相違がある可能性が浮上してきた。両言語におけるこのような相違の存在の検証も含めて、日本語と韓国語の類別詞表現の統語と意味に関する調査が必要になった。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の点に着目しつつ研究を行う。 1. 後置型類別詞表現におけるNP移動の性質に関して、研究初年度で提唱した仮説(Huang and Ochi 2014を参照)を破棄して、移動の随意性に基づく新たな仮説(上記「現在までの進捗状況」欄を参照)の妥当性について検証していく。なお、この仮説は近年の極小主義モデルにおける移動操作に関する最新の仮説と合致するものである。 2. 日本語と韓国語における類別詞表現の統語分析に関して、両言語の前置型類別詞表現の振る舞いの違い(上記の「現在までの進捗状況」欄を参照)及び両言語の後置型最小化詞におけるとりたて詞の(非)音形化に関する相違点を調査する。
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Causes of Carryover |
データ収集のための国内及び海外調査及び国際学会における発表の予定に遅れが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗状況に若干の遅れは出ているものの、研究全般の進捗状況には大きな影響はないと言える。次年度は上記「今後の推進方策」欄で述べた2点の課題の調査を通して現在までの研究成果の精緻化を計りつつ、成果発表に重点を置いた執行計画を立てる予定である。
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Research Products
(3 results)