2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Proper Names and Singularity Based on Meaning Eliminativism
Project/Area Number |
25370437
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 智宏 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (00396839)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 固有名詞 / 単文のパズル / 認知言語学 / 捉え方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な研究成果は以下の二点である。第一に、(1)と(2)が真であるにもかかわらず(3)が偽となるという単文のパズルを解決した。 (1) スーパーマンはクラーク・ケントより高いビルを飛び越えることができる。 (2) スーパーマン = クラーク・ケント (3) #スーパーマンはスーパーマンより高いビルを飛び越えることができる。 このパズルの有力な解決案として、意味論的には個体を指す固有名詞「スーパーマン」「クラーク・ケント」が、(1)においては「全体→部分」のメトニミーにより個体のある局面を指し、そのため同一個体を指す表現で置き換えることができないとするものがある。この解決案に関しては、(2)を知らない人でも(1)が理解できるという問題が指摘されている。「個体→個体の局面」というメトニミーが可能であるためには、まず個体にアクセスしなければならないが、それができるためには(2)を知っている必要がある。この問題を解決するために、固有名詞は個体を経由しなくても個体の局面を直接指示することができるとする固有名詞論を構築した。固有名詞は本来的に言語使用者の関心に応じていかなる対象も指すことができ、「固有名詞は個体を指す」というのは(意味論的事実ではなく)社会的慣習にすぎない。 第二に、この考察に基づき、認知言語学の「捉え方」概念を洗練化した。(1)の真理条件「「スーパーマン」が指す対象aは「クラーク・ケント」が指す対象bより高いビルを飛び越えることができる」に関して、(2)を知っている人が「aとbは同一個体cの異なる局面である」と捉えるの対して、(2)を知らない人は「aとbは異なる個体である」と捉える。これまで考えられてきたように「発話の形式が異なれば発話主体による事態の捉え方が異なる」だけでなく、「発話の形式が同じでも、発話主体による事態の捉え方は異なりうる」のである。
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Research Products
(4 results)