2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370439
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
中井 延美 明海大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30406384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 佑司 慶應義塾大学, 付置研究所, 名誉教授 (90051747)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 素名詞句 / 非素名詞句 / 名詞句の形式特性 / 定的 / 不定的 / 代用表現 / 英語の定表現 / 名詞句の指示性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語名詞句の基本形である「本」「子ども」「学校」のような形式そのものに不可視的に付随する働きと仕組みを明確にすることである。研究代表者は、日本語には素名詞句(すめいしく)と非素名詞句(ひ-すめいしく)という二種類のタイプの名詞句の形があることを論じてきた。本研究では、名詞句はそれ自体が概念的意味を表すと同時に、素名詞句・非素名詞句という形でもって文中に現われることによって手続き的意味を表することに注目している。また、それらの名詞句が文中で(非)指示的名詞句として機能することと、名詞句の形式(素名詞句か、非素名詞句か)を関連づけ、意味論的・語用論的に分析し、体系的にまとめることを目指している。 平成25年度には、次の二つの立場から、素名詞句と非素名詞句の形式特性を探った。一つは、「手をつなぐ」の意味構造とそこに含まれる「手」の意味を検討した。もう一つは、本来的に指示的機能を果たすタイプの待遇名詞句(「貴社」「弊社」など)と、そうでないタイプの待遇名詞句(「ご子息」「玉稿」など)があることを踏まえ、名詞句を待遇表現として機能させる言語要素(接辞など)と名詞句の形式特性との関わりを検討した。 平成26年度には、代用表現「そう」によって結ばれる照応関係を通して、名詞句に不可視的に付随する働きや仕組みを探ることを試みた。たとえば、「太郎はU高校を卒業した。花子もそうだ」「犬は人の気持ちを察することができる。イルカもそうだ。」のように先行文が措定文でなくてもgenericnessや属性概念を表すばあいには、後続文において代用表現NP「そう」が意味機能Predを有する。そのような先行文から「そうだ」の「そう」が受けるものが何であるかを検討した結果、「そう」は先行文の示す内容を一種の属性概念(性質)として名詞化した形で、叙述名詞句概念として受けているのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Definiteness(定性)という概念と名詞句の指示性に関する先行研究(Donnellan 1966; Higgins 1976; Hawkins 1978; Declerck 1983, 1984他)を見直し、そこから日英語における定的・不定的な名詞句の形と、それらと相互作用する意味機能として指示性・非指示性との関係を分析するために必要な諸概念(理論的枠組み)を整理するという作業を平成26年度に継続していたが、一部先行研究の見直しがなお継続中である。 また、名詞句構造への深い洞察力を有する外国人インフォーマントを見つけることが困難であるため、日本語における素名詞句と非素名詞句に相当するような名詞句の形が他の言語にあるかどうかの調査にまだ着手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度~26年度に進めた研究の総括を行う。平成26年度の作業を継続し、分析に必要な諸概念(理論的枠組み)の明確化を目指す。平成25年度は、主として英語の定表現と指示性の関係について意味論的考察を行ってきた。平成26年度には、日本語の素名詞句・非素名詞句に焦点をあて、意味論的考察に加えて語用論的考察を展開した。平成27年度には、さらに日本語における素名詞句と非素名詞句について、広範なデータを用いて観察・分析し、それらを英語名詞句の定表現・不定表現との差異や類似性をもとに整理していく。
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Causes of Carryover |
海外での研究成果の発表に伴う出張、インフォーマントへの謝礼および英語論文校閲費が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外での研究成果の発表が平成27年度に実行される予定である。また、従来の使用計画に加え、インフォーマントへの謝礼および英語論文校閲費が発生する見込みである。
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