2015 Fiscal Year Research-status Report
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25370449
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大久保 朝憲 関西大学, 文学部, 教授 (60319605)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アイロニー / からかい / ポライトネス / 論証的ポリフォニー理論 / 意味ブロック理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度前半の期間に、アイロニーの「違反性」についての論文(フランス語)、アイロニー研究の理論的比較に関する論文(英語)(昨年度の研究成果として報告ずみのもの)、そして「ほめごろし」というレトリックをめぐる論文(日本語)がそれぞれ刊行された。他方、編集者からの依頼をうけて、論文集『フランス語学の最前線』第4巻(2016年刊行予定)に、本研究計画の中間報告的な意味あいの論文の準備と執筆作業に年度前半はついやされた。 年度後半は、11月に、フランス(リヨン)でのアイロニーとからかいについてのシンポジウムでの発表の機会をえて、アイロニーとからかいの関係を、ポライトネスの概念をふくみいれながら記述することをこころみた。このシンポジウムのプロシーディングズの発行も計画されており、現在その原稿を執筆中である。 具体的な研究内容における進展は、以下のとおりである。前年度後半に、試論として、アイロニー、からかい、緩叙法、婉曲表現のすべてを、論証的ポリフォニー理論と、意味ブロック理論のわくぐみで総合的に記述することをこころみたが、今年度は、特に上記のリヨンでの発表にむけて、こうした論法の検証をおこない、こうした文彩の記述には、ポリフォニー理論以上に、意味ブロック理論がつよい有効性をもっていることが確認された。 アイロニーについての言語学的研究は、国内外ともに関連性理論の影響力が非常につよいが、本研究を上記のような文彩の総合的理論化として位置づけることによって、それに対抗しうる論考となりうる可能性があるとかんがえられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
在外研究で海外にでていた昨年度にくらべて、国際学会などでの発表の機会は減少したが、「研究実績の概要」でものべたとおり、理論的な進展が、本研究の理論的スケールを拡大する方向にはたらいていることから、このように判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
「からかい」などをあらたにふくめて、領域的なスケールを拡大しつつある本研究を理論的にサポートするために、論証的ポリフォニー理論・意味ブロック理論の部分的修正をここころみると同時に、関連性理論でも議論されている「規範的偏向normative bias」を今後の研究のキーワードのひとつとして研究をすすめたい。この概念は、称賛的アイロニーと単なるからかいを区別すると同時にアイロニーとからかいの概念を架橋する可能性をひめた重要な概念であるとかんがえられ、今後重点的に検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
相当の金額がかかることを予想していたフランス語・英語コーパスに無料のものが利用できるばあいがおおかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、最終年度にあたるので、特に充実した報告書の作成費用に充当したい。年度全体としては、本年度も、11月に国際研究会への参加(フランス・パリ)を予定している(詳細未定)ので、旅費に一定額の支出が生じる。また、現在執筆中の英語論文完成のための英語校閲ほか、資料整理などによる人件費の支出も相当額となる予定である。物品費については、図書およびパソコン周辺機器(プリンタなど)の購入の可能性がある。
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