2015 Fiscal Year Research-status Report
消滅の危機に瀕する古アジア諸語の再活性化のための辞書編纂と語彙データベース構築
Project/Area Number |
25370453
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
永山 ゆかり 北海道大学, 大学院文学研究科, 助教 (20419211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長崎 郁 国立国語研究所, 言語対照研究系, プロジェクトPDフェロー (70401445)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 言語学 / ドキュメンテーション / データベース / 辞書 / 古アジア諸語 / ロシア / シベリア / 少数言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、消滅の危機に瀕する古アジア諸語のアリュートル語およびコリマ・ユカギール語について、1. 言語再活性化のための辞書編纂と基礎資料の拡充、2. 用例つき語彙データべース作成、3. ロシア地域で話される危機言語の辞書作成のための研究の3点を行なうことを目的とする。 前年度に引き続き、平成27年度にはアリュートル語、コリマ・ユカギール語に加え、セリクープ語に関する調査研究を行い、次のような成果を得た。1. 資料拡充のための既存のテキスト・語彙資料の整理・分析:本研究の代表者永山ゆかり(北海道大学)および分担者長崎郁(国立国語研究所)がこれまでに収集した各言語のテキスト資料および語彙資料について整理・分析を進めたほか、電子化の進んでいなかった資料をデータベース化した。2. 言語調査による資料収集と分析:現地調査はアリュートル語についてのみ実施した。ロシア連邦カムチャッカ地方パラナ村において、永山が過去に収集した音声資料の分析ならびに新たなテキスト資料を収集した。新たに調査対象としたセリクープ語について、長崎が基礎語彙の整理と分析を行なった。また、動植物名について現地生物学者らの協力を得て、学名の確認を行なった。これにより得られた成果の一部は、北海道大学大学院文学研究科の助成を得て、永山ゆかり・長崎郁編『シベリア先住民の食卓:食べものから見たシベリア先住民の暮らし』(東海大学出版部)として刊行した。3. 辞書作成の方法論の研究:ロシアにおける少数言語の辞書作成の実績がある研究者と打ち合わせを行ない、技術的な問題や編集方針に関して助言を得た。また論文やデータベース等から事例研究を行なった。 さらに、分析した資料をもとにそれぞれの言語に関する文法研究を進め、その成果を学会等での口頭発表(永山2件、長崎2件)ならびに論文(永山2本、長崎2本)として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は前年度に引き続き(A) 資料拡充のための既存テキストの整理・分析、(B) 現地調査による資料収集、(C)辞書作成に関わる方法論の研究を行なうことを予定しており、当初の計画はおおむね達成できたといえる。 (A)について、今年度は既存資料で、データベース化されていなかった資料をデータベースに組み込んだ。データベースに関しては辞書項目のキリル文字表記と用例の入力を進めた。さらに、すでに収集したアリュートル語の動植物名について写真や専門書をもとに学名の確認を行ない、得られた成果の一部を日本語で出版した一般書の中で援用した。また、新たに調査対象としたセリクープ語について、基礎語彙資料の整理・分析を進めた。 (B)については、研究実績の概要で述べたとおり、ロシア連邦カムチャッカ地方において言語調査を実施し、既存資料の分析を進めたほか新たな資料収集および文法調査を行なった。 (C)については、キリル文字表記については前年度にテキスト資料を刊行した際におおむね方針が定まったので、これに従い順次作業をすすめている。辞書項目の用法について、これまでは母語話者への対面調査で確認していたが、テキスト資料の用例を優先して作業の効率化をはかるという基本方針を定めた。またロシアにおける少数言語の辞書作成の実績があるロシア人研究者と打ち合わせを行ない、ロシア語部分の校閲の協力について合意を得た。また、シベリア地域の他の言語の研究者らが発表した論文やデータベースを参考に、辞書作成に関わる問題点について整理した。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者と分担者の役割分担、基礎資料の拡充と分析、フィールド調査の実施、辞書作成の方法論の調査など研究活動の主要な部分は前年度までの計画と同様である。長崎の調査対象に関して、コリマ・ユカギール語の調査に加えて、セリクープ語資料の調査を行なうこととした。既存資料をもとにしたコリマ・ユカギール語の文法研究はこれまでどおり継続する。2017年3月に予定しているロシア語対訳つきアリュートル語辞書の刊行に向けて、用例の入力や、キリル文字表記の入力、辞書項目の最終確認作業を進める。またこれと合わせて、分析した資料をもとに文法研究を進め、研究成果を国際学会等で発表する。なお、現在までの進捗状況で述べたとおり、ロシア語校閲に関してロシア人研究者の協力を得られることになったため、ロシア語校閲のための人件費・謝金として計上した費用は旅費等に変更する。変更額は使用ルールで許容される範囲内であり、変更にあたっての問題はない。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Nominalization in Alutor2016
Author(s)
Yukari Nagayama
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Journal Title
Juha Janhunen and Ekaterina Gruzdeva (eds.) Linguistic Crossings and Crosslinguistics in Northeast Asia Finnish Oriental Society
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
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