2013 Fiscal Year Research-status Report
フランス語文型体系の抽出 : 統辞機能・語彙と他動性・属詞性を基軸として
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25370466
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
敦賀 陽一郎 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (30155444)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文型特徴 / 不可欠性 / 主題 / 直接目的 / 間接目的 / 代名動詞 / 受動態 / 副詞 |
Research Abstract |
文型抽出基準の検討(以下の表記でアクサン記号は省略)。構成要素の不可欠性(例.Luc se comporte bien で bien は不可欠)は必ずしも形式的・結合的構文特徴にはつながらない。代表的文型特徴である直接目的でさえ省略は稀ではない。また,不可欠であっても,副詞,副詞句・節は多くの多様な述辞を限定しうるので述辞下位クラスを特徴づけない。当該要素だけではなく,その範列(paradigme)が一下位クラスの述辞の特徴となることが重要である(例.Luc arrive a [N/Vinf/etc.] の方向性位格 a-N の範列は一定の述辞のみを限定)。他方,Luc est fou de partir の de partir は副詞要素とされる(Luc est fou en ce qu'il part)が,この種の de-Vinf を許容する形容詞の下位クラスは限られるので一つの文型特徴とみなしうる。この構文は主題を二つ含むとみなしうる点も重要である。Luc が文の第一主題で(Luc est fou),de partir が第二主題となる((De) partir est fou)。これと似ている Luc est content de partir とは違う構文である(この de partir も文型特徴である)。 コーパスの整備・分析。種々の文型の代表となる動詞述辞分析のための高頻度動詞の実例コーパスは,上位 1000 動詞についてかなり整備することが出来た。また,過去の分析の代表的なもの(Tresor de la langue francaise の記述,等)についても整理しえた。これらには 2013 年度の対象の次の文型クラスの典型となるものも多く含まれている。(1)直接目的他動詞文:N0-V-N1-(V:動詞),(2)間接目的他動詞文:N0-V-prepN1-(prep:前置詞),(3)代名動詞文:N0-se1-V-,(4)受動態文:N0-etreVe-(Ve:過去分詞)。最終的には他文型も加えて典型的な動詞30種程度と更に非動詞文の種々の文型について網羅的分析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文型抽出基準については,項の不可欠性(ある必須項が文型特徴となりうるか)についての分析・検討はある程度なしえた。統辞構造の中核たる文型体系の基盤をより明確にするためにも文型抽出の他の基準についても検討する必要がある。例えば,当該述辞形の異なる記号内容の指標となる構成要素は文型特徴となりうるかどうか(Luc apprend1 la lecon - Luc apprend2 la lecon a Lea で a Lea は apprend2 の指標になる)。構成要素の配列(動詞文型の特徴項は動詞の右に来る),両立可能な特徴項(特に間接目的項:Luc herite de cela de ses parents)の数,等。 文型分析の動詞の実例コーパスの構成(Le Monde 紙 1994 年を基にして各動詞毎に実例 1000 例を収集したもの)と既存の分析・記述(Tresor,等の大規模辞書の記述)の整理も高頻度動詞についてはかなり進んでいる。 以上の文型の理論的問題の検討とコーパスの全体像把握のための作業に時間をかなり費やしたため,対象個別動詞の選択とその実例の具体的構文分析が遅れている。これまでに蓄積されている分析例(charger, planter, traiter, approcher, payer, faire, laisser, juger, 等の構文 )とは異なった直接目的他動詞文,間接目的他動詞文,代名動詞文,受動態文(これらの文型の各々には多くの下位クラスがあり,その各々に代表的動詞がある)の個別の分析とそれらの構文の相互関係の検討が遅れている。 更に,個別動詞の分析とは別に,均質コーパス(Le Monde 紙の社説に限る)の全テキストを対象とした文型分析(全般的にどのような文型がどのような頻度で出現するかの調査)も分析対象の一つであるが,これも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の遅れている点(特に他動詞直接目的・間接目的文と他文型との関連での個別動詞の具体例の分析)を進めながら,2014 年度の主対象である属詞文型と他文型との関係の分析を代表的動詞の具体例で実施する。直接目的他動詞文の一部の他動詞属詞文:N0-V-N1-[A/N](A:形容詞),自動詞属詞文:N0-V-[A/N]-,非動詞文:A,-N (Chauds,les marrons!); PrepN-,N(De cela,la revolution!),等,と他文型(特に動詞文文型)との関係が特に対象となる。 属詞と直接目的との違い(N0-V-Natt.1 - N0-V-Nobj.1(att:属詞,obj:目的項))は属詞とみなされる要素が文の統辞的中心,つまり,述辞であるか,動詞述辞の項の一つであるかを見極めるという意味で重要になる。また,他動詞属詞文(N0-V-N1-A2: Je trouve Luc gai)と自動詞属詞文(N0-V-A1: Luc est gai)との関係は,属詞文の根幹にコピュラ(etre)の潜在を想定するかどうかという意味で,これも属詞概念の定義に関連してくる。更に,間接目的属詞文(Je juge de cela comme important)の認定の是非(これは範列に形容詞を含まない項も属詞と認めうるかどうかの問題:間接目的の属詞はあまり取り扱われて来ていない)も属詞の定義に関係する。属詞機能の多くの実例による検証が必要である。 また,etre の属詞自動詞文と非動詞文との関係(Les marrons sont chauds! - Chauds,les marrons!)の解明(一部の非動詞文の根幹にコピュラの潜在を想定するべきかどうか)も,非動詞文の全文型体系の中での位置づけの観点から重要になる。 以上の問題を個別動詞の具体例の分析・検討によって明らかにしていくこと,そして,均質コーパスによる全テキストを対象とする文型分析の継続・補充が 2014 年度の目標となる。
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Research Products
(3 results)