2014 Fiscal Year Research-status Report
カナダ北西海岸地域諸言語の形態統語法に関する記述的研究
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25370470
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
堀 博文 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (10283326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹間 史子 大阪学院大学, 情報学部, 准教授 (60330114)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 北米先住民諸語 / ハイダ語 / 海岸ツィムシアン語 / 言語類型論 / 文法記述 / 国際研究者交流 / カナダ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,カナダのブリティッシュ・コロンビア州の北西海岸地域で話されるハイダ語(系統不明)と海岸ツィムシアン語(ツィムシアン語族)を対象に,これまで行なってきた現地調査で得た成果を踏まえ,それらの言語の文法記述の継続的な発展をめざすべく,主に複文構造や情報構造に関する理解を一層深めることを目的とするものである。2014年度は,次の点に主眼をおいて約1ヶ月ほどの現地調査を行なった。 1.情報構造に関する分析。調査で新たに蒐集したテキスト資料とおよそ100年前のテキスト資料を分析することによって,ハイダ語における人称代名詞の自立形とクリティック形の使い分けが情報構造に大きく関わっている可能性を明らかにした。 2.複文構造に関する考察。海岸ツィムシアン語において複文を作るのに用いられる接続詞について継続的に調査を行なった。 3.その他の文法事象に関する調査。ハイダ語は言語類型論的に複統合的な言語と見做されるが,実際のテキストをみる限り,複統合性を十分示すほど複雑な語が現われる頻度は低い。その要因として派生接辞の意味的な制約,現在の話者の言語運用能力が考えられる。特に後者については,日常的に英語を使う場面が多くなっている現状にあって,分析的な表現が多用される傾向にあることを指摘した。また,海岸ツィムシアン語の文法記述に関わる問題として,人称接尾辞と人称クリティックの使用,更に,複数性の標示,所有表現に用いられる接尾辞に関する資料を重点的に蒐集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を遂行する上で最も重要なのは現地調査であり,そのためには,現地の話者との協力関係が必要不可欠であるが,本課題に関わる研究者はいずれも長年にわたる調査の経験があり,現地の話者とも良好な信頼関係を築いている。また,現地の治安も平穏であることから,調査を行なうのに十分な環境が整っているといえる。このように本課題を遂行するのに大きな障碍がないことから,本課題は順調に進んでいると評価できよう。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本研究課題の最終年度であることから,ハイダ語と海岸ツィムシアン語の現地調査を行なうことによって,文法事象に関する記述を一層進め,その成果を公表することを計画している。
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