2015 Fiscal Year Annual Research Report
カナダ北西海岸地域諸言語の形態統語法に関する記述的研究
Project/Area Number |
25370470
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
堀 博文 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10283326)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹間 史子 大阪学院大学, 情報学部, 准教授 (60330114)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 北米先住民諸言語 / ハイダ語 / 海岸ツィムシアン語 / 文法記述 / 言語類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,カナダのブリティッシュ・コロンビア州の北西海岸地域で話されるハイダ語と海岸ツィムシアン語を対象に,文法面における様々な言語事象を中心に解明を図り,これまで行なってきた記述研究を一層発展させることを主な目的とするものである。前年度に引き続き,2015年度もそれぞれの言語の文法記述を行なうべく,およそ1ヶ月の現地調査を行なった。 まずハイダ語については,テキストの蒐集と分析を通じて,1人称代名詞と3人称代名詞の自立形とクリティック形の現われの解明を図った。その結果,これらの人称代名詞は,統語的要因(特に他動詞節における目的語の有無),動詞の他動性の程度,更に談話的な要因として活性化の度合いによって自立形とクリティック形のいずれが現われる傾向にあるかが明らかになり,それらの中でも統語的要因が最も優先されるという結論を得た。加えて,言語類型論的観点から,ハイダ語の動詞形態法の特質を考察し,特にその複統合性とその実態について,テキスト分析を通じて考察を加えた。また,ハイダ語の関係節の統語的特徴を探るための基礎資料の蒐集を図った。 一方,海岸ツィムシアン語については,等位接続詞をはじめとする接続詞に関わる資料を集め,その機能と用法に関して検討するとともに,これらの接続詞の使用にみられる話者間の差異についても観察を行なった。更に,海岸ツィムシアン語の無標の語順はVSOであるが,V以外の要素が焦点化されて節のはじめに置かれることがある。どのような要素が焦点化されうるのか,とりわけ対比文にみられる焦点化について動詞の形成にかかわる接辞ともからめながら検討した。 それらの言語の復興に資するよう,以上の研究成果を現地の言語教育に還元する方途を関係者と協議した。
|