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2014 Fiscal Year Research-status Report

ルクセンブルク語地域変種の文章語での使用に関する研究

Research Project

Project/Area Number 25370472
Research InstitutionAichi University of Education

Principal Investigator

田村 建一  愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90179896)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywordsルクセンブルク語 / ヴィルツ方言 / 方言の文章語使用 / ドイツ語方言学
Outline of Annual Research Achievements

平成25年度に引き続き、26年度も8月下旬から二週間ルクセンブルクに滞在し、5人のヴィルツ方言話者に対して方言使用や方言意識に関する聴き取り調査を実施した。また、25年度に執筆した論文「ルクセンブルク語話者の方言意識と文章語での方言使用―ヴィルツ方言を中心に―」(刊行は26年度)に基づいて選定した方言語彙の実際の発音も調査した。
25年度のヴィルツでの調査の2人のインフォーマントはどちらも高年層に属していたが、26年度は20歳代のインフォーマント4人からの聴き取りも実施できた。調査の結果、方言使用が若い世代にも受け継がれており、話すだけでなく、個人的なメール等の電子メディアで文章語としても使用されること、また使用される方言語彙には世代差や男女差がないことを確認することができた。
もう1人のインフォーマント(50歳代男性)からは、彼の父親が若い時に両親との間で交わした手紙にはドイツ語に交じってルクセンブルク語、しかもヴィルツ方言の文も多数含まれていたとの情報を得、実際に1940年代に書かれた手紙の文面を打ち直したファイルを後日送っていただいた。手紙での方言使用が当時どの程度行われていたのか、まだ確認するに至っていないが、親しい間柄での手紙等の文章語に方言を用いることが、少なくとも北部地域ではかなり以前から行われていた可能性があると考える。
二回の現地調査に基づき、ルクセンブルク語のウィルツ方言を中心とする北部方言の音韻的・文法的特徴と方言の使用状況について、ベルギー研究会で研究発表を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

26年度の現地調査では、前年度のインフォーマントの仲介により、ヴィルツの若い世代の人たち(男性1名、女性2名、全員が高学歴層)から直接聴き取りができたのが最大の成果であった。調査では言語生活のほか、上記の戯曲『なめし皮男爵』の分析に基づいて選んだヴィルツ方言の音韻・文法の特徴を含む語彙項目について実際の発音も調べた結果、高年層の人たちが文章語の中で用いる方言形がほとんどすべてそのまま若年層にも用いられることが明らかになった。
ただし、インフォーマントはみな方言意識が非常に高く、首尾一貫して方言を用いる人たちであるが、彼女たち・彼らが同じ地域の若年層の言語生活を代表するわけではない。実際、広域から生徒が集まる中等教育の段階(13歳以降)で、生徒同士の会話に方言ではなくルクセンブルク語標準語を使用し始める人たちも多数いることが調査からわかった。こうした人たちが電子メディア等の文章語でどの程度方言を使用するのか、本年度は調べることができなかった。
また、代表的な北部方言の一つであるクレルヴォー地区の方言に関しては、地域の文化誌『クレルヴォー・カントン』のバックナンバーを調べた結果、方言形で書かれた記事も毎号いくつかあることがわかったが、その特徴の分析はまだ途中段階で、論文にまとめるまでには至っていない。

Strategy for Future Research Activity

これまで2回実施した現地での聴き取り調査の成果を、口頭発表「ルクセンブルク語北部方言の文章語での使用」(日本独文学会、平成27年5月29日)として公表する。さらにそれを発展させた内容を論文としてまとめる予定である(投稿先未定)。
報告者は当初、ルクセンブルク語の方言話者が文章語に方言を用いるようになったのは、電子メディアが発展してからの現象であると考えていた。しかし、何十年も前から地域向けの雑誌や行事パンフレットには方言で書かれる記事が掲載されている事実や、上の項目9で記したように、かつて私的な手紙が方言で書かれていたという事実を、インフォーマントを通じて知ることができた。日本と異なりルクセンブルクでは、方言の特定の語あるいは表現だけではなく文章全体が方言で書かれるのであるが、こうした現象は昨今に始まったわけではないことがわかった。
私的あるいは半公的な領域の文章語としての方言の使用は、その方言が共同体のコミュニケーションに重要であることを書き手が強く意識していることを示す。ルクセンブルク語標準語が文章語としての使用領域を拡大する以前は、少なくとも北部地域に関しては、方言が口語、文章語を問わず親密性を表す手段として機能したと考えられる。この点について、高年層のインフォーマントから、その家族、友人の方言使用に関するさらなる情報を得たいと考えている。
また、これまでヴィルツ方言の特徴についてはある程度まとめることができたが、クレルヴォー地区の方言も文章語として使用されている資料もいくつか入手しているので、この方言の音韻・文法の特徴もまとめたいと考える。

Causes of Carryover

聴き取り調査のインフォーマントの人数がこちらの希望に満たなかったことと、インフォーマントのうち中年男性の一人が謝金の受け取りを固辞したため、謝金の支出が予定よりも下回った。

Expenditure Plan for Carryover Budget

26年度は請求分のかなり多くを現地調査の実施のために使用したが、27年度は現地調査を予定していないため、請求分を主としてルクセンブルク語関連図書の購入と学会発表のための旅費、および成果のウェブ公開のための費用として使用する。26年度の次年度使用額は、ルクセンブルク語関連図書の購入に充てたいと考える。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] ルクセンブルク語北部方言の特徴2014

    • Author(s)
      田村 建一
    • Organizer
      ベルギー研究会第57回研究会
    • Place of Presentation
      西宮市大学交流センター(兵庫県)
    • Year and Date
      2014-11-09

URL: 

Published: 2016-05-27  

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