2014 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語における「状態変化」の表現形式―語彙と統語形式の相互関係―
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25370473
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
カン ミンギョン 三重大学, 人文学部, 特任准教授 (30510416)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 状態変化 / 使役構文 / 機能動詞結合 / アスペクト / コーパス / コロケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドイツ語の使役形式(状態変化動詞、lassen使役構文、使役の機能動詞結合)の使用実態を分析し、形式間の相互関係を明らかにすることである。まず、大量のコーパスデータに基づき、V lassen構文と機能動詞結合zum V bringenがそれぞれどのような動詞の使役形式として用いられているかを調査した。とりわけ、非使役的用法のみの動詞を含む場合を中心に、語彙的使役動詞に代わる分析的使役形式として、(1)V lassenが用いられる場合、(2)zum V bringenが用いられる場合、(3)V lassenとzum V bringenの両者が用いられる場合のそれぞれについて分析を行った。(1)と(2)については、それぞれに含まれる動詞の意味特性(アスペクト的特性)において傾向の相違が観察されている。(3)については、両形式の意味的相違(使い分け)が問題となるが、多義的動詞の場合は、意味用法別にそれぞれ異なる使役形式が使用されることがあり、それは結びつく名詞(不定詞の意味上の主語)の種類においても相違が確認できる。この2つの使役形式は、これまで別々に扱われてきたが、一つの枠組みでデータ分析することにより、使役表現の体系の中でのそれぞれの役割がより明らかになってきたと言える。なお、語結合分析の際は、不定詞の意味上の主語だけでなく、使役構文の主語(人か物か)も対象とし、有生性の観点からも分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの取り組みでは、まず、コーパスに基づき、使役と非使役の対応について動詞、構文、機能動詞結合を一つの枠組みで分析するための方法論を検討した。また、とりわけ非使役的用法のみの動詞を含む分析的使役表現V lassenと zum V bringenのコーパスデータを大量収集し、名詞も含めてコロケーションを整理した。両使役形式の使い分けを明らかにする上で、まずはそれぞれに含まれる不定詞の種類が問題になるが、それらの動詞は、動作主性動詞と非動作主性動詞が区別され、後者はさらに完了相動詞と非完了相動詞に分けられる。これらの動詞の分布は構文形式によって違いがあることが確認されており、lassen構文に関しては多くの場合、不定詞の意味特性によって構文の意味解釈が異なることが指摘されている。また、使役主が無生物主語の割合も埋め込まれる動詞の意味特性によってかなり差があり、使役構文の意味や使用実態を分析する上で、有生性も重要な観点の一つであると考えられる。現在、無生物主語使役構文についての分析結果をまとめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のように、これまでは、自動詞を含む使役形式を中心に扱ってきたが、使役の概念は相対的なもので、使役形式の中に他動詞(使役動詞)が含まれる場合やlassen構文の中に機能動詞結合が含まれる場合もある。使役表現の全体像を体系的に記述するためには、これらも含めて分析する必要がある。 研究方向や分析方法に関して大きな変更はないが、頻度分析の方法については、未だ再検討の余地があると考えている。異なる2つの形式を使用頻度の観点から分析する際、少なくとも次の2つを区別する必要がある。両者が同じ意味を表す場合(表現上のヴァリエーションである場合)は、どちらの形式がより好まれて使用されているか、すなわち使用頻度が問題になる。しかし両者が異なる意味を表す場合は、その使用頻度はそもそもどちらが言語使用上より多く表現の対象になるかを示すものであり、両者の頻度を単純に比較することはできない。Lassen構文とbringen機能動詞結合の場合、埋め込まれる動詞によって、前者の場合も後者の場合もあり、分析の際はその区別が重要である。 今後の課題としては、まず、コーパス分析の成果をコロケーションの形で整理しデータ集を作成することと、分析結果を理論的に精緻化させ論文の形にまとめあげることである。また、今後の研究の展開として、日本語の「~させる」との対照分析と、使役構文と結果構文の接点、の2つの方向を考えている。使役構文と結果構文は、語彙(使役動詞・結果動詞)の限界を埋める表現形式として共通する部分がある。ただ、結果構文はコーパスデータの収集が容易ではないという点に方法論上の難しさがある。これも重要な課題の一つである。
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