2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370479
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻 星児 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (40108113)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 中期朝鮮語 / 古語辞典 / 基礎語彙 / 朝鮮資料 / 日本資料 / 歴史言語学 |
Research Abstract |
本研究は,朝鮮語古語辞典作成のための基礎的研究を行うことにある。そのため25年度の計画に基づき,次の3点の研究を実施した。なお,古語は全時代を網羅することはできないので,15世紀の中期語と17世紀の『捷解新語』の語彙を中心とした。 1.基礎的古語(中期語)の選定とその用例に基づく注釈と分析:諸種の基礎語彙表を検討し,「言語調査票2000年版」をもとに,全体として300語程度を抽出した。本年度は,その中から人体基礎語50語,数詞10語を取り上げ,中期語の原典から直接用例を抜出し,意味の分析と注釈および翻訳を行った。引用文献は,原則的に初出文献とし,用例は,すべて各文献に当たり適切な例を選んだ。この結果は,今後26年度に,他の関連人体語その他と合わせ,体系的に整理したうえで発表する。 2.『捷解新語原刊本』と『倭語類解』の朝鮮語語彙集の作成:『捷解新語原刊本』については,文法的形態素も含んだ語彙索引はすでにほぼ全体が完成しているが,今回,各朝鮮語に対訳の日本語を添える必要があると判断し,その確認作業を行った。今年度は,その作業に終始し,約三分の一(約4千項目程度)の確認作業を終了した。同時に,朝鮮語形態素の丁数と対訳語の選定と入力を行っている。本年度は,約1~2割の実績であった。『倭語類解』については,朝鮮語本文の電子化はできており,その掲出語の選定を行っている。『捷解新語』を中心とする朝鮮王朝時代の日本語の研究と教育については,本研究の成果を含めてシンポジウムで発表した。 3.未調査の言語交流資料の発掘:本年度は,東京都立中央図書館の中山久四郎旧蔵資料中の朝鮮語関係資料の調査を行った。その結果,『日観考要』,『草梁話集』,『朝鮮紀事』,『征韓録』,『御代々朝鮮人来朝』などの資料を発掘することができ,江戸時代の仮名書き朝鮮語(例:機張クチャン,京道ケントウ,大峙ハンタイなど)を蒐集することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究の目的」は,3つあり,1.古語の選定とその用例に基づく注釈と分析,2.『捷解新語』原刊本と『倭語類解』の朝鮮語語彙集の作成,3.未調査の言語交流資料の発掘,である。 1については,当初500語程度を考えていたが,用例の選択,分析,注釈などに非常な労力がかかり,数十語の分析に終わった。さらに,中期朝鮮語文献の索引が不備である点も研究の進捗を妨げている。公刊されている注釈書も限られており,索引も一部しかない場合もある。 2について,『捷解新語原刊本』の入力が遅れている。あらたに,索引に対訳日本語を付すことを計画にいれ,この作業のために時間を取られたこともあるが,いっぽうで形態素分析が十分できていないことから,修正に時間がかかったことも遅れた原因でもある。なお,『倭語類解』の索引作成にも同様な問題がある。 3については,本年度は1機関(東京都立中央図書館)にとどまったが,ある程度達成でき,新たな朝鮮資料,日本資料が発掘,調査できた。 以上により,全体的な達成度としては,若干遅れているものと自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究における今後の推進課題としては次のようなものがある。 1. 当初,基礎語彙の選定を1000語-2000語としたが,本年度の進捗から考え,全体を500語(以下)程度に厳選し,バラエティに富んだ用例と注解を目指す。 2. 辞書および索引作成のための文法形態素の同定と見出し語掲出のありかたを確立する。これにより語彙索引を整理し,見やすく使いやすい辞書,索引を目指す。 3. 未調査の資料として,文禄慶長の役に関わる仮名書き朝鮮語を今後広範囲に調査すべきであり,とくに韓国での調査も視野にいれるべきこと。 以上が今後の課題としての方向付けである。
|