2015 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル語仏典を活用した中期語における言語接触と言語変容の研究
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25370482
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20156574)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モンゴル語仏典 / 中期モンゴル語 / 言語接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在われわれが目睹し得るモンゴル語仏典の大半は清朝時代の製作品である。ところが、その中には原テキストの成立が元朝時代と推定されているものも少なくない。これらは、当時の言語である中期モンゴル語の資料として活用可能である。そこにはモンゴル仏教の汎ユーラシア的性格と元朝社会の多民族・多言語状況が色濃く反映されており、ウイグル語、チベット語、漢語等の周辺諸言語との接触の痕跡が豊富に保存されている。この仏典モンゴル語は、17世紀以降のチベット仏教の定着と普及とあいまった、現代文章語の性格の一半を形成しちる。その研究は、近年隆盛を迎えている社会言語学を歴史的視座から捕らえる可能性を有しており、モンゴル語学のみならず一般言語学にも有益な知見を提供し得るものである。 本研究は、研究代表者の年来の研究蓄積に立脚しつつ、最新の知見を縦横に取り入れて、中期モンゴル語期における言語接触の実相を解明することとそれがモンゴル語の性格にいかなる影響を及ぼしたかを検証することを目的としている。 最終年度においてはスロバキア共和国ドナイスカ・ストレーダ市において開催された第58回常設国際アルタイ学会においてモンゴル語訳『法華経』にかかる最新の研究成果を世に問い、同学の志の批判を仰いで、内容の一層の洗練を心がけた。また、モンゴル語における接触の実相を具体的な仏典の行文解析を通じて明らかにする試みをインディアナ大学出版の単行本の一章として公にするとともに、『人文学論叢』においても行った。これらの成果に基づき、日本語、特にその漢字文化の性格を全アジア的視野から捉える試みを行い、延辺大学、全州大学校等において日・中・韓の研究者に問い、活発な議論を繰り広げた。 本研究課題は研究代表者のライフワークと位置づけられるもので、今後のさらなる蓄積を心がけたいと考えている。
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Research Products
(10 results)