2014 Fiscal Year Research-status Report
自発音声における発話の継続・終了の予測に関わる韻律情報の解明
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25370505
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
小磯 花絵 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・構造研究系, 准教授 (30312200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石本 祐一 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (50409786)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コーパス / 韻律 / 自発音声 / 会話 / 独話 / 発話末予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,自発音声における発話の継続・終了の予測に関わる韻律特徴を,コーパスに基づく分析と知覚実験を踏まえて実証的に解明することである。この目標を達成するため本年度は次のことを実施した。 ①発話内におけるピッチ(F0)の変動:昨年度に実施した独話を対象とする分析を対話にも適用し,両者の比較を通して,(1)独話だけでなく対話においても発話全体に見られるF0の下降が強い統語境界でリセットされる傾向にあること,(2)独話では見られたfinal lowering(FL)に相当する発話末の急激な下降は対話ではほとんど観察されないこと,(3) 自発性の高い発話では発話末のF0は高い傾向にありFLが生じにくく,対話は相対的に発話の自発性が高いことからFLが生じにくい可能性があることなどを明らかにした。この結果は,発話全体に見られるF0の下降については独話・対話を問わず見られるが,FLについては発話の自発性やスタイルなどの違いにより出現に差が見られる可能性のあることを示唆する。 ②アクセント句末の音調:句末音調に関して平成25年度に明らかにした研究成果(上昇調・上昇下降調は切れ目の強い節境界に頻出すること,節境界以外では係り先や主節までの距離が遠くなるほど多く出現することなど)を論文としてとりまとめた。 ③統語情報と韻律情報が発話末認知にどのような影響を与えるか調べるために統語的な発話末らしさとFLの程度を組合せた音声による反応実験を行った。その結果,F0下降の影響は小さく,統語情報が発話末認知に大きく関わる傾向が見られた。しかし統語情報だけでは予測できない発話末に対しても人間は適切に反応できることも示され,音響情報が発話末認知に関わる可能性が示唆された。 また『日本語話し言葉コーパス』を研究に利用しやすい形に整備し,データ設計について発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,①会話における発話の継続・終了に関わる韻律特徴の基礎調査,②コーパス分析に基づく韻律特徴への反応可能性の検討,③実験的手法に基づく韻律特徴の認識可能性の検討を行なうことを計画していたが,このうち①と③については着実に遂行し研究発表を行なった。また平成25年度に実施した独話を対象とする成果も論文としてとりまとめた。②については分析は進めているが研究発表には至らなかった。これについては平成27年度での発表を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
コーパス分析に基づく韻律特徴への反応可能性の検討については,引き続き分析を進め,研究成果を発表する。知覚実験についても追加実験を行なう。またこれまでの成果をとりまとめ,発話末を予測するモデルの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
知覚実験のために購入を予定していた信号処理用ソフトウェアについて,今年度実施した実験では必要なかったため購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に追加実験を行なう。その過程で必要に応じてソフトウェアを購入する。
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