2014 Fiscal Year Research-status Report
日本語史基礎資料としての世阿弥真蹟文書の総合語彙索引の作成
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25370526
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
金子 彰 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (20126402)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 世阿弥真蹟文書 / 世阿弥自筆能本 / 世阿弥自筆能楽論書 / 世阿弥自筆書状 / 小謡集 / 語彙総索引 / 中世芸能 / 中世語 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ、研究題目「日本語史基礎資料としての世阿弥真蹟文書の総合語彙索引の作成」に従って、前年度に続いて次の語彙総索引を作成した。研究誌に作成語彙総索引を投稿掲載した。金子彰・冨田千晴・石黒のぞみ編「世阿弥自筆能本『布留』語彙総索引稿」(新潟県ことばの会『ことばとくらし』第26号、2014年10月、24~50頁)、金子彰・東京女子大学大学院有志編「世阿弥自筆能本『阿古屋松』語彙総索引稿」(東京女子大学『日本文学』第111号、2015年3月、191~221頁)。 Ⅱ、世阿弥真蹟文書の実地調査は次のように行った。奈良県生駒山宝山寺の世阿弥真蹟展観(8月)。新潟県阿賀野市立「吉田東伍記念博物館」・新潟市「吉田文庫」の世阿弥関係文献調査(5月・8月・8月)。 Ⅲ、既公刊分の世阿弥語彙総索引の修訂作業を行った。底本とする複製本の本文を点検して精確な語彙総索引に仕上げるものである。特に世阿弥の朱点、声点等の独特な表記の確認を行い正確な記述に努めた。 Ⅳ、今年度までに自筆能本8本、自筆書状2本の語彙総索引作成は一応完了した。自筆能楽論書は『花伝第六花修云』は完成したが『花伝第七別紙口伝』『花伝内抜書』の2書が未完成である。この原稿作成に着手している。これが次年度に完成すれば世阿弥自筆文書語彙総索引は全て完成することになる。各文献の修訂作業を行いつつ、未完成文献の完成を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ⅰ、平成26年度までに、世阿弥真蹟文書の本文の翻字本文、語彙総索引を作成し、それに修訂を施して研究誌に投稿し公刊したものは以下の通りであり、予定よりも少し早く進捗している。(1)自筆能楽論書―『風姿花伝』巻第六(観世文庫蔵)、(2)自筆能本―『柏崎』(宝山寺蔵)、『盛久』(宝山寺蔵)、『難波梅』(観世文庫蔵)、『松浦之能』(観世文庫蔵)、『江口』(宝山寺蔵)、『雲林院』(宝山寺蔵)、『多度津左衛門』(宝山寺蔵)、『布留』(観世文庫蔵)、『阿古屋松』(観世文庫蔵)、以上で世阿弥自筆能本の語彙索引作成は一応完了した。(3)自筆書状―『金春蝉竹宛』(宝山寺蔵)2通、(4)小謡集―『金島書』(吉田文庫蔵)。 Ⅱ、残る世阿弥真蹟文書は以下の通りであり、現在、翻字本文の作成、語彙総索引の第一次稿作成作業を進行中である。自筆能楽論書―『花伝第七別紙口伝』(観世文庫蔵、応永十年代か)、『花修内抜書』(観世文庫蔵、応永二十五年)。 Ⅲ、既作成の各語彙総索引を合綴し、『世阿弥真蹟文書総合語彙索引』のデ―タベ―ス作成の準備に取り掛かっている。各文献への略号付、索引の配列等の検討に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ、既公刊の語彙総索引の精度を上げる必要がある。世阿弥真蹟文書は朱点、焦点、小字書の表記等が見られ、複雑極まりない。それを丁寧に補って、中世語資料として学界に信頼される基礎資料として語彙総索引の提示を目指したい。 Ⅱ、作成が残っている自筆能楽論書―『花伝第七別紙口伝』(観世文庫蔵、応永十年代か)、『花修内抜書』(観世文庫蔵、応永二十五年)の完成を目指し、公刊を行う。この2文献は実見が叶わぬもので、観世文庫の観世家のアーカイブ等を検索して、正しい本文の入手に努めたい。 Ⅲ、奈良県生駒山宝山寺の世阿弥真蹟展観や、新潟県阿賀野市吉田東伍記念博物館、吉田文庫等に赴き、世阿弥自筆文書の実見を行い、複製本では把握し難い箇所の補訂に努め正確な資料提示を行いたい。 Ⅳ、既作成の各文献語彙総索引を統合し、『世阿弥真蹟文書総合語彙索引』のデ―タベ―ス作成し、完成を目指したい。各文書ごとの語彙に略号を付し、全索引を合綴した際の整備統合を行う。世阿弥自筆文書の全語彙が一書で把握できる総合語彙総索引を作成することで本研究は完成する。
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Causes of Carryover |
Ⅰ、研究代表者が10月以降体調を損ね、本研究のための索引作成作業が停滞し、予定の作業が出来なかったことによる。10月以降に予定していた世阿弥文献の実地調査旅行が行えなかった。代表者による原稿作成が予定より進まず、研究協力者の入力作業が少し停滞した。それらによる研究作業の停滞によって出費が予定額を下回った。 Ⅱ、自筆能楽論書の未完成版『花伝第七別紙口伝』『花伝内抜書』は、原本の実見が叶わず、観世家のアーカイブを利用することしか現在は方法がない。原本を底本としようとする本研究の作業の進展に少し障がいが生じている。原本把握の克服に時間が掛かっていることもこの2書の研究の進行が遅れている理由でもある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Ⅰ、世阿弥関連の書籍を所蔵する新潟県阿賀野市吉田東伍記念博物館、新潟市の吉田文庫、奈良県生駒山宝山寺等への実地調査(5月、8月、11月他)に赴く予定である。研究協力者も同道して写真撮影、原本の書写等を共に行う。その出張経費に前年度未使用分も出費する予定である。 Ⅱ、自筆能本の8本は、語彙総索引がすべて完成した。その点検補訂作業に研究協力者の謝金を使用する。自筆能楽論書の完成版『花伝第六花云』の作成と補修点検に、未完成版『花伝第七別紙口伝』『花伝内抜書』の索引作成作業に原稿の入力等の補助として、研究協力者の謝金を使用する予定である。又、全索引を統合した『世阿弥総合語彙索引』を作成するため、研究協力者に入力等の謝金を使用する予定である。
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Research Products
(8 results)