2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370527
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
福島 みどり(天野みどり) 大妻女子大学, 文学部, 教授 (10201899)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 構文 / 類推 / 意味拡張 / 自動詞構文 / 接続助詞 / 接続詞 / 逆接 / のが |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「構文」の意味という慣習的な知識が、実際の言語理解・言語生成のプロセスにおいて重要な役割を果たすということを、日本語自動詞構文の考察を通して明らかにすることである。 本年度は、自動詞構文のうち状態変化自動詞を述語とする「のが」構文と、接続詞的な「それが」を冒頭に持つ文とを考察対象とし、その関連性を明らかにした。接続詞的な「それが」を冒頭に持つ文の中には、「それが」の「が」が主格助詞だとするとそれを統括する述語部分が無いように見えるものがある。そのため、「それが」の「が」は主格ではなく、「それが」全体で「しかし」「けれども」に相当する逆接の接続詞として定着しているとも解釈できる。本研究では、書記言語・音声言語の両方のデータで接続詞的な「それが」を冒頭に持つ文の文脈、意味を観察した。その結果、「しかし」「けれども」とは異なる文法的特徴・意味を有することが明らかになった。それらは状態変化自動詞を述語とする「のが」構文、すなわち「サマ主格変遷構文」の持つ特徴・意味と同様のものであり、両者には関連があるとした。 この研究の結果、サマ主格変遷構文の構文的知識が、二文以上の連接関係に貢献する言語形式、すなわち、談話文法上の機能を有する言語形式へと、拡張的に使用されていることが明らかになった。特に、音声言語データからは多様な接続的意味が観察され分析できていないものがある。それらの分析は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
状態変化自動詞を述語とする「のが」構文だけではなく、多様な自動詞構文を研究対象とし体系性を論じる当初の予定の通り、名詞述語文・形容詞述語文・状態変化自動詞以外の自動詞を述語とする文を調査し、その上で、昨年度来のサマ主格変遷構文の考察を深めた。 予定通り、日本語母語話者に対する「構文」知識に関する調査に加え、外国人日本語学習者に対する「構文」知識に関する調査も行った。 今年度の成果は、2本の学術論文と1回の学会発表により公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、日本語母語話者がサマ主格変遷構文を修得し拡張的な言語使用を行っていることを明らかにした。この、慣習的構文知識が無い場合には、同様の拡張的使用は困難であることが予測される。このことを検証するために、最終年度では外国語としての日本語修得者の言語使用を調査したい。 これまでの研究を、一般的論述の中に位置づけ、まとめていく必要がある。内外の学会・研究会での議論を活性化し、最終的な結論にまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度においては、所属機関の異動があったために、継続して本務校で開催してきた研究会・ワークショップを開催できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は本務校で研究会・ワークショップを開催し、議論を活性化することにより最終的な成果にまとめていく。 また、口頭発表の場として国外の学会を一件予定している。
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