2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370530
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
朴 真完 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (90441203)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 朝鮮資料 / 『対談秘密手鑑』 / 『交隣須知』 / 『和語類解』 |
Outline of Annual Research Achievements |
「朝鮮資料」の辞書類のうち、朝鮮通事の候補者朴為良によって編纂された『対談秘密手鑑』(1849年、写本、一冊)を中心に書誌学的考察及び内容分析を行った。まず文献調査の結果、本書には二種の異本、京都大学文学研究科図書館蔵本と大武進氏旧蔵本とが存在することを確認した。 また異本『対談秘密手鑑』のデータベースを作成し、先行文献との関連性を調べた結果、『対談秘密手鑑』は、苗代川に伝わる朝鮮語学習書の形式面・内容面の両方から影響を受けたことが確認できた。本文の体制は基本的に、見出し語を上段に短文を含む語彙説明を下段に配置するという方式を取っており、これは苗代川本『交隣須知』(京都大学所蔵) の方式を踏襲したものである。また本文最後の「言語」条(頁73~92)においては、上段に見出し語、下段に訓読みと朝鮮語訳を配置する形式を取っている。これは苗代川本『和語類解』(京都大学所蔵) の形式と概ね一致している。 しかし本文中には「語傍」条が設けられ、日本語の助詞・助動詞が集中的に収録されている。この点は他の朝鮮語学習書には例を見ない本書だけの特徴である。さらに訓読み語、日本国字や当て字が説明されている点から見ると、本書は、実際の活用頻度において、主に日本語学習用として使われた可能性が高い。その説明は文法・語彙はもちろん、日朝における漢字字形の違いまで及んでいるが、このような態度から見ると、『対談秘密手鑑』は現在まで報告されている苗代川本朝鮮語学習書類とは性格を異にするということが指摘できよう。 以上の事実は本書の編纂目的とも関連するが、苗代川朝鮮通事の業務の一つとして漂流民との「対談」内容を薩摩藩に報告する義務があったこと、本書の成立以前にはその活動をサポートするための工具書が存在しなかったことを勘案すれば、『対談秘密手鑑』のような朝鮮語兼日本語学習書が必要だったということが十分理解できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「朝鮮資料」辞書類のデーダベースを作成することが当初の目標であった。おおむね計画どおり進んでおり、研究目的を達成するための研究計画どおり進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を踏まえ、既作成の辞書類のデーダベースを基に、各書の異本間における比較・対照研究を行う。その過程で中・近世日本語語彙体系はもちろん音韻の分析まで進む予定である。
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Research Products
(2 results)