2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370537
|
Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
西岡 敏 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (30389613)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 琉球語 / 琉球民謡 / 語彙 / データベース / 歌謡語 / 文語 |
Outline of Annual Research Achievements |
琉球民謡のうち、沖縄語および八重山語を基礎とした歌謡(沖縄民謡・八重山民謡)の分析を進め、「歌謡語」というジャンルにおける語彙的な特徴について分析した。沖縄民謡では、民謡の音声を音韻記号で正確に写し取り、語彙を切り取って品詞分解・活用語の分析を行った。沖縄民謡の語彙の中には、首里方言の口語の包括的な辞典である『沖縄語辞典』にも見受けられない表現が数多く見られ、沖縄語の語彙を全体としてさらに充実させることができたの同時に、「歌謡語」の文語的な特徴を提示することができた。これら蓄積をデータベースの一部に加えた。 また、八重山歌謡でも、民謡の音声の正確な記述に努め、「歌謡語」を蓄積するのと同時に、民謡の音数律と語彙の長短との関係に注目して考察を行った。音数律と語彙との関係は、日本の和歌(57577音)でも字余りの解釈として研究の中でもたびたび取り上げられていきている。八重山歌謡においても、定型性をもったもの(54音、554音など)については、音数律に合致するように長さの異なる語彙が選択されることがある。例えば、「生まれ」に当たる語彙が、日常語(口語)に近い「マリ」になったり、文語的な「ウマリ」になったりするのは、音数律の制約が働いていることが要因と考えられる。 このほか、八重山歌謡においては、ハ行音がP音のみならず、固有名詞を中心にH音でも現れるものがことが判明した。これは現在、石垣島四箇字方言で進行しているP→Hの変化と軌を一にしていることが考えられる。沖縄民謡の語彙においても、F音(フィ)を選択するか、H音(ヒ)を選択するかで揺れが見られることがある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
以下のような理由による。 1.沖縄民謡と八重山民謡の「歌謡語」の分析に重点を置きすぎている。 2.奄美民謡、宮古民謡、与那国民謡の「歌謡語」の分析が進んでいない。 3.他の琉球語研究のジャンルに研究時間を費やしてしまった。 4.研究代表者において、研究を達成するために必要十分な時間がなかった。 5.資料の整理や入力、語彙の分析を補助する研究協力者が得られなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下のような方策を考えている。 1.沖縄民謡、八重山民謡における語彙だけでなく、奄美民謡、宮古民謡、与那国民謡における語彙の蓄積と分析を進める。 2.オーディオテープ、ビデオテープなどのアナログ資料を効率的にデジタル化し、分析するための機器やソフトを揃える。 3.研究協力者を募り、資料の整理や入力、語彙の分析を補助してもらう。
|
Causes of Carryover |
以下の理由により、研究の進捗に遅れが生じたため。 1.記載資料の収集に手間取ってデータの入力が思うように進まなかった。 2.適切な音源資料の収集ができなかった。 3.資料整備およびデータ入力を補助する人員がいなかった。 4.当該研究以外の研究に時間を割かれた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の使用計画を考えている。 1.研究遂行上、有益となる学会に参加し、本研究の成果に活かす。 2.本研究に係るフィールドワークを積極的に行う。 3.研究補助を行う適切な人員を配置し、収集した資料を整理・分析する。 4.本研究に必要および参考となる音源資料、書籍、機器、ソフトウェア等を追加で購入する。
|
Research Products
(8 results)