2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370540
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 英光 北海道大学, 文学研究科, 教授 (10142663)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | indirect directives / directives / imperative / cognitive linguistics / frequency / verb / request |
Research Abstract |
初年度では、英語の間接指令構文の認知言語学的分析をするための基礎データを構築した。具体的にはアメリカのミステリー小説28編を電子書籍で購入して検索した。その結果、英語には間接指令構文として少なくとも15種類を認定できることが判明した。これは当初の9種類を大きく上回る結果である。つぎに、これら15種類の間接指令構文全体で計912例を収集し、間接指令構文ごとの相対的使用頻度数を明らかにした。具体的には、(i)間接指令構文にも命令文と同様に多様な非状態動詞が使われる、(ii)tell, come, go, do, getなどは命令文と同じく間接指令文でも使用頻度が高い、(iii)tell, give, letの三動詞は命令文と同じく間接指令構文でもmeと共起する頻度が高い、(iv)しかし間接指令構文の中で高頻度の動詞に一定の違いが観察される、(v)letは命令文と比べて大多数の間接指令構文では使用頻度が非常に低い、(vi)giveは命令文では使用頻度が高いがI want you to構文では稀である、などの新しい知見が得られた。以上の成果は、“A Usage-Based Analysis of Indirect Directives in English (1): A Preliminary Quantitative Survey” 『北海道大学文学研究科紀要第143号』(2014年6月刊行予定)にまとめられている。 また、以上のデータ収集と平行して、can you型を含む一部の間接指令構文の質的分析も行い、その成果を2つの国際学会―国際認知言語学会第12回大会(カナダ)および国際語用論学会第13回大会(インド))―にて口頭発表とポスター発表をそれぞれ行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で指摘した通り、当該研究にとって最も重要である基礎データである間接指令構文の実例計912件が文脈付きで作成されている。これによって今後、本研究の量的分析と質的分析両面の分析が可能な状態となっている。さらに本研究では当初の予測以上の成果が得られている。第一は、9種と予想した間接指令構文が、実際にはそれ以上で計15種類を分類できた。第二は、それらを疑問文グループ(9種類)と平叙文グループ(5種類)、条件節(1種類)に明確に分類し多彩な包括的な統計データが得られている。数例を挙げると、使用頻度が最も高いcan you構文(疑問文)は200例、二番目のwhy don’t you構文(疑問文)は171例、三番目のI want you to 構文(平叙文)は148例、will you構文(疑問文)は106例、集まり今後意義ある一般化ができる。以上は研究が計画を上回っていると言える。 2つの国際学会における研究発表と2つの招待講演では、各国の言語学者および多様な理論言語学者と討論ができ本研究の分析方法であり自身が開発したForce Exertion理論の妥当性と有効性が確証されている。 一方で、計画より進んでいない点がないわけではない。個々の間接指令構文の文脈の解釈にはストリー全体の把握が必要なため予想以上に時間を要すことが判明し、結果的に個々の間接指令構文の詳細な研究はやや遅れている。以上、計画より進んでいる面と点と計画よりやや遅れている面を相殺し「おおむね順調」と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の5点に要約される。 第一に、基礎データに情報を補足して改良を施す。具体的には、初年度は間接指令構文を言語文脈付きで912例収集したが、本研究には不可欠な話者と聞き手の情報および両者の社会関係の情報が埋めていない。これは膨大な時間を要するが、2年目にこの作業の大部分を完成させる。第二に、基礎データでは使用頻度の高い間接指令構文については使用頻度の高い動詞を特定できた。しかし使用頻度の低い間接指令構文は10数例しかなく使用頻度の高い動詞を特定するのに至っていない。これらについては大規模コーパス(COCA)を随時用いてデータを補充して解決する。第三に 初年度にも着手したが、Force Exertion理論(6パラメター分析)を大幅に基礎データに適用して質的分析を進める。指令構文全般の使用についての当該研究者の原理―『命令文回避の原理: 要求する行為のコストが高くかつ聞き手にとって応じる義務が低い時に自分の利益のため裸の命令文を使うことは避けよ ー ただし緊急時を除く』(Takahashi 2012: 111)―の検証を進める。第四に、使用頻度の高い動詞とその用法(量的分析)とForce Exertion理論(の6パラメター分析)からの個々の構文の特徴付けを順次論文にまとめる。この分析を通して間接指令文同士の相違点、を明らかにする。 第五に、以上の調査結果を2014年の8月に講師を務める日本言語学会夏期講座(名古屋大学)、2014年11月に司会・講師を務める日本英語学会シンポジウム(学習院大学)、および2015年7月開催の国際認知言語学会(英国)および国際語用論学会(ベルギー)にて成果を順次公開していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電子機器の値段が予想より低額であったため。 次年度に購入する電子機器に当てる。
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