2017 Fiscal Year Annual Research Report
On the Relation between Focalization, Topicalization and Ellipsis of Verb Phrases and Functional Categories
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25370544
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石原 由貴 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40242078)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重複 / 否定 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度には、これまで行って来た述語重複構文の研究を「おいしいのおいしくないのって」のようなAffirmative Negative Emphatic Construction (ANEC)(肯定否定強調構文)に応用することを試みた。この構文は、肯定形と否定形の述語を繰り返して述語の程度を示す尺度を導入し、肯定の述語の程度の甚だしさを強調するもので、現れる述語は段階性を表す形容詞や、段階性をもった状態を表す「疲れてる」のような「テイル」形の縮約をともなった動詞に限られる。これは、「食べるのなんのって」のような「なんの」を伴う類似の構文が、より広い範囲の述語を許すこととは対照的である。興味深いことに、ANECは過去形で生起することができない。「暑かったのなんのって」に対して、「*暑かったの暑くなかったのって」は容認度が落ちる。Ishihara (2018)では、この現象が、疑問文の答えとして否定の述語重複構文が容認されにくいことと類似していることを指摘した。 Q: ねえ、あの論文、読んだ? A1: うん、読んだ読んだ。/ A2: ううん、読まなかった(*読まなかった)。 ANECでも述語重複構文でも、否定形の述語を強調することが過去形では難しいという共通点をもつ。Ishihara (2018)では、これを、「なかった」という過去の否定辞が「nak-at-ta」のように「ある」という動詞を含んだ形で再分析できることに関連づけて説明することを提案した。強調構文では述語がEmphasisという主要部にある強調素性と一致することが必要であるが、否定の過去形の述語は動詞「ある」を含む形に再分析され、それが間に介在することにより強調との一致関係がうまく結べないのである。 本研究は、定型化されたさまざまな構文を調査し、そこでも文法の普遍原理が働いていることを示すことができたと考えている。
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