2013 Fiscal Year Research-status Report
談話における焦点化構文の総合的研究-関連性理論,認知言語学,機能文法,による考察
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25370546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
加藤 雅啓 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (00136623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文法 / 談話 / 語用論 / 代名詞 / 話題指示 / 保留指示 / 指示付与 / 処理労力 |
Research Abstract |
文法と談話という2つの領域は互いに独立した領域と考えられているが、人間の言語運用の場面では、文法による規制と談話からの要請との軋轢が文法体系の再構築を迫る圧力となる事例も少なくない。本年度は、文法と談話の多様な関わり合いの具体的事例として、談話における代名詞解釈を取り上げ、文法による統語的制約に対して、話し手・聞き手・場面という語用論的要因からの要請がどのように関わっているかという課題について検討した。 具体的には、代名詞の指示機能として話題指示(topic reference)と保留指示(suspended reference)を取り上げ、指示付与には談話の話題(discourse topic)が密接に関与していることを指摘した。すなわち、(i)談話における代名詞は談話の話題を指示する傾向が高いこと(話題指示)、(ii)内田(2000、 2011)で提案された保留指示(suspended reference)は、意図的に処理労力を高めた話題指示の特殊な例であることを明らかにした。 さらに、代名詞については、文のレベル、談話における文の機能のレベル、及び発話解釈のレベルのそれぞれのレベルで指示付与に関わる規則や原則が必要であることを明らかにし、代名詞の指示付与に関わる文文法、機能文法、及び語用論の棲み分けについて明らかし、それぞれの研究領域の成果を有機的に結びつけることにより、新たな分析が可能となり、より一般性の高い成果が期待できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英語分裂文に関して、生成文法、関連性理論、認知言語学、機能文法のそれぞれの枠組みにおける先行研究を総括した。生成文法の観点からは、「移動に課される統語的制約」の観点から、英語分裂文の研究は文レベルにおける分析だけでは不十分であることを検討した。さらに中島(1995)の「主語からの外置については統語論と語用論の棲み分けが必要である」という分析に注目し、統語論と語用論がどのように役割を分担しているのかという課題について、談話における代名詞解釈の問題を取り上げて検討した。具体的には、代名詞の指示付与に関わる文文法、機能文法、及び語用論の理論的棲み分けについて、「話題指示」と「保留指示」という観点から明らかにした。この際、文文法と談話文法のインターフェースとして関連性理論の理論的背景を内田(2011)、Carston(2002)に基づいて検討し、これらの研究成果を2編の論文として発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、談話における右方移動構文に関する関連性理論、認知言語学、及び機能文法のそれぞれの枠組みにおける先行研究を総括する。関連性理論の観点からは、右方移動構文が談話内で果たす談話機能と関連性理論との関わりを検討する。とくに、談話における右方移動構文と先行文脈との意味的つながり、もたらされる認知効果、及び処理労力との関連性を探る。さらに想定から導かれる論理形式と語用論的推論との関係を明らかにし、談話における右方移動構文に関する推論メカニズムを検討する。 また、中島(1995)の主語からの外置の分析の枠組みに従い、談話における右方移動構文に関する統語論と語用論の棲み分けという観点の可能性を考察する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に予定していた英国における文献調査(旅費)について、相手方の都合により行うことができなかった。また、当該年度に購入予定であった図書(洋書)(物品費)が年度内に納入できなかった。さらに、当該年度に予定していたデータ入力作業(人件費・謝金)を研究代表者自ら行った。 以上の理由により、次年度使用額が生じた。 本年度は英国における文献調査(旅費)について、相手方と十分に意思疎通を図り、できるだけ早期に実行できるように努めたい。また、図書、特に洋書については、注文から納入までに相当な時間がかかることをあらかじめ想定し、早めの発注を心がけたい。
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Research Products
(3 results)