2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370551
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 禎之 大阪大学, 文学研究科, 教授 (90233329)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 語彙概念拡張 / 項・付加詞 / 非対称性 / メトニミー・メタファー / 身体部位表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては、昨年度に英語の名詞30個に関して500事例ずつのデータを集めて、項位置と付加詞位置での拡張解釈の可能性を検証したことに引き続いて、日本語で名詞30個に関して同様の検証を行い、英語に類似した検証結果を得ることができたことがあげられる。 項位置での用例250と付加詞位置での用例250ずつを集めての検証を行ったが、それぞれ利用したコーパス(BNCおよびBCCWJ)で該当数に至らない場合もあり、また固有名詞として利用されている事例は考察対象から外したこともあり、部分的には充分な検証データ数を得られていないと考えられる事例も見受けられるが、おおむね日本語においても英語においても、概念拡張解釈は項位置におけるバリエーションの方が付加詞位置におけるよりも広く、似たような分布状況を示していることがわかった。 もう一つ興味深いのは、付加詞用例に項位置用例に認められない拡張解釈が認められたのが、英語ではeye(s)とhandであったが、日本語では「手」「足」「耳」「鼻」という4つの名詞であり、これらすべてが身体部位表現であったということである。身体部位表現には様々な意味が付加されやすいが、意味が豊かになるにつれて、その使用方法も変化していき、一筋縄ではいかない複雑な解釈分布を見せる現状に至っていると考えられる。この様な特殊な解釈傾向が、局所的に身体部位表現に多く観察されていることは、決して無意味なことではないだろうと思われる。他の言語に関しても同じような傾向が認められるのかどうかも考察していくべき価値のある事柄ではないかと現在考えている。 最後に、今年度は近年名詞化の研究を精力的に行っておられるライス大学の柴谷方良教授に御来学戴き、講演をお願いし、意見交換ができた。このことは、非常に有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の英語データの収集に引き続いて日本誤用例についての検証を予定通り行えたことは計画通りであった。ただ、歴史的な検証についてはこれから考えていく必要がある部分であり、辞書の記述のみに頼っていくことには限界があり、今後頭を悩ませるところがあると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、歴史的な検証を行う材料としてOxford English Dictionaryや日本国語大辞典を利用しているが、これ以外にも、歴史的なコーパスを利用していくつかの名詞表現についての意味の変遷を跡づけられるような調査ができると良いと考えており、現在その方法を模索中である。
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Causes of Carryover |
図書の発注納品などに一部遅れがあり、計画通りすべての予算執行を終了できなかったが、少額の予算使用額であり、次年度に図書費として利用することで執行できるものと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は、当初の予定通り、国際認知言語学会で発表を行うことを計画し、既に応募原稿は採択されている。従って、ある程度まとまった旅費が必要となり、その他は予定通りに図書、物品購入の費用に充てることで消化できるものと考えている。
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Research Products
(2 results)