2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370553
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 永幸 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (10232547)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 英語シノニム / 英語類義語 / 英語語法研究 / 英語コーパス言語学 / 英語辞書学 |
Outline of Annual Research Achievements |
編者のひとりを務めた南出等(2016)は,日本を代表する英語辞書の編集に関わった研究者の論考を集めたものである。所収の井上(2016)は,国内で初めて企画段階からに本格的にコーパスを編集作業に導入した辞書として2003年に初版,2007年に第2版,2013年に第3版を上梓した『ウィズダム英和辞典』について論じている。まずは,辞書編集にコーパスを活用する利点を明示し,第3版を例に,どのような編集方針を策定したかを示した。次に,上級者向け学習辞典として,コーパスに基づいて従来語法上問題とされてきた事項や日本語母語話者が英語を使う際に疑問に思う事項を検証するというコーパス基盤的(corpus-based)な立場と,コーパスデータから新たな言語事実や法則性を発見するコーパス駆動的(corpus-driven)な立場を実践したことを示した。また,上級者向け辞書ならではの規範主義と記述主義の観点から,非文と((非標準))のレーベル付与の問題,他辞書との差別化という観点から括弧書き語法注記やコラム「コーパスの窓」について検証した。最後の節では,紙製版と同内容の辞書に各種検索機能を持たせたオンライン版Dual WISDOMと,紙製版辞書の用例を増強して,全体をコーパスとして検索活用できる「用例コーパス」について紹介した。 井上(2016b)は,習慣的に特定の副詞と共起する語彙項目を観察することで,それらの語彙項目の特徴的な振る舞いが見えてくることを指摘した上で,副詞は文法・語法研究における要であることをコーパスを活用した辞書編集の立場から示す。具体例として,すでに従える主格補語の観点から分析しているfall と become をあげ,習慣的に共起する副詞を分析することによって、動詞の意味特性をより的確にあぶり出し、辞書における語法記述がいっそう効率的で客観的に行われるようになることを示す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度から平成29年度にかけて,12項目のシノニム・語法研究を行う予定である。井上(2016)において種々のシノニム・語法研究事例について扱っているが,井上(2016b)においては,1項目の新規事例を扱った。研究成果は着実に積み上げられているが,それぞれが相互に関係し合っているので,一括しての発表に至っていない部分がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は,平成25年度から平成29年度までの5年間に,日本人英語学習者が誤りやすい12項目の英語シノニム・語法について,統語的特徴や意味的特徴を種々のコーパスを使って分析し,日本人英語学習者がそれらを使用する場合にどういった点に注意すればよいかをふまえて,それらを記述しようとするものである。最終年度である平成29年度は,全12項目の中から,残りの3項目について研究を進めてゆくとともに,5年間の研究成果の総括を行う予定である。なお,本研究は,申請者のみで行うため,共同研究者の途中離脱などの可能性はなく,順調に研究が推進できることを確信している。
|