2013 Fiscal Year Research-status Report
認知言語学から見た進行形の制限に関する通時的・共時的研究
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25370555
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 万里子 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (20189773)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 現代標準英語の進行形 / 認知言語学 / 現代英語における進行形のアスペクト制限 / 英語の単純形 / 18-19世紀の英文法記述 / 近代後期英文法書の社会的意義 / 近代後期英国の英語教育 / 英語の標準化 |
Research Abstract |
平成25年度は、ほぼ本研究申請書で記した計画通り、資料収集・学会発表、及び論文執筆を行った。 1. まず、近代後期の英文法書を網羅しているAlston (1974), Görlach (1998)をもとに、国内外で入手可能な、200冊以上の英文法書、学術書、それらに関する資料等を収集・考察しつつ論考を進めた。中でも世界で唯一大英国図書館にしか所蔵のない複写・スキャン不可の貴重資料等を、8月と3 月に渡英して閲覧・書写し、重要情報を入手できたことが大きな収穫であった。 2. 7月迄の収集資料から得られた論考を、8月にオスロで開催された国際歴史言語学会で発表し、参加者との意見交換を通じて新しい観点からの知見を得、研究を進める上で押さえるべき点を再確認した。 3. 11月迄の研究成果を12月に紀要論文に纏め、2014年7月の国際英語史学会への準備を始めた。 本年度研究計画の中心となった調査活動成果として、目的に挙げた仮説Iを検証する上で核心的と言える事実が多々浮上した。中でも、近代後期英文法・学術書におけるPickborn(1789)の単純形と進行形、進行形の制限に関する記述の意義を以下の点から確認する事ができた。1) Pickbornの当該記述は、先行文法書には例を見ないものであり、以降は剽窃・酷似しているものが多い。2) 近代後期の著名な文法書には進行形の制限規則に反する例が進行形の唯一の例として挙げられていることも多い一方、Pickborn以降、Pickbornと類似の禁則説明があり、後者が前者を再版数で遥かにしのぎその影響力の大きさが推測できる。3) 頻度・用法等で近代後期最も華々しい躍進を遂げた進行形の趨勢、近代後期の英国社会に於ける、英文法書の爆発的増大とその役割、英語の標準化、英語教育のあり方等、制限規則の浸透へと繋がる現象が目立つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、進行形に、(Langacker (1987, 1991)の)認知文法で明確されたアスペクト分類による制限が、現代標準英語ではあるのに対し、1) 19世紀初頭迄の英語、2) 現代でも英語方言、にもない場合があり、3) 進行形を構成する場合以外の現在分詞にいもない理由を、追求するものであり、本年度研究計画は、そこに密接に関わると考えられる18~19世紀の英文法書の進行形についての記述を網羅的に収集し、仮説を検証することであった。収集過程で本研究に有意義な事実を把握する事ができ、その点では、当初予定以上に研究が進展した。だが、申請当時前提としていた、進行形に関わる境界という二者択一的概念に関する軌道修正を含めた、理論的枠組みの根底から、研究の方向性の微調整が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度では、前半で、文献を調査する中で、現代英語進行形の制限は、Pickbourn (1789)で初めて言及されたと目され、その後の英文法書に影響を及ぼした事が仮定できる事実を捉える事ができ、後半はそれを裏付ける論拠を集める作業を進めて来たが、26年度以降の研究は、その作業を更に進め、そこから見えて来ると思われる新しい方向、より広く複合的な領域からの視野、からの探求に取り組む。 具体的には、まず、25年度後半である程度捉える事が出来た、「近代後期英文法書における進行形とアスペクトの関係記述に、18世紀終盤、180度の転換が見られる事実例」の収集を更に押し進める。また、進行形の発展を取り巻く近代英語の英文法書のありかた、その社会との関係を追求する。更に、25年度の終盤から進めて来た、現代標準英語では容認不可とされる近代後期英語までの進行形の例を、収集可能な限り拾い集め分析していく作業に、本格的に取り組む。進行形の近代英語の現存文献全体における出現頻度は低く、口語的であればある程それが高い事が広く知られている。従って、進行形は基本的に口語英語であったことが推測される。しかし当時の口語英語はテキストとして残存していない為、その収集は不可能である。だが、口語英語に近いと考えられる書簡や日記等を収集することは可能であり、そこから計り知得る限りの進行形の実際の使われ方をつぶさに考察することから始める。 同時に、文法書の記述が実際の言語使用に何らかの影響を及ぼした可能性にも、更なる支持材料を追求する。今のところ、上記概要における成果の3番目に記した、進行形の躍進、近代英語英文法書の役割、その記述特徴、その社会的背景、現代の進行形の使われ方などが論拠となっている。だが、それを強化し、新たな展開を探る。 更に、申請書に挙げた仮説IIの追求も始めることになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の学会発表及び資料収集の為の旅費が申請時より増加する事が見込まれるため 旅費に充当
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