2015 Fiscal Year Research-status Report
認知言語学から見た進行形の制限に関する通時的・共時的研究
Project/Area Number |
25370555
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 万里子 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20189773)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | Lindley Murray / Noah Webster / Visser, F (1973) / The Progressive / Aspectual Distinction / Late Modern English / Prescriptive Grammar / States |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、まず、本年度新たに発見した資料に照らし、前年度迄収集成果を再精査した。次に、学会における情報交換等で得られた収穫を基に、論考を再検討した。その上で、途中経過報告の形で、3つの論考著述に纏めると共に、2つの国内外の学会で発表した。 <4-10月> 6月に国際基督教大学図書館で、8月には大英国図書館で、Lindley MurrayのEnglish Grammar、1795年の初版から1812年版までを中心に版毎に行われた改訂過程等を調査した。数々の先行著名文法書から殆どそのまま、あるいは抜粋してつなぎ合わせただけで、引用先も明記されないままの「編纂」が殆どであった初版から、全く同じ箇所、加筆修正された箇所について、記述の引用元を探った。併せて、19-20世紀のMurrayに言及する文献を網羅的に収集し、同書が小説読者層なら誰もが知る文法書だった事実に照らし、Murrayの英語の書き言葉の規範における役割を考察した。7月までの研究成果は、ベルギー、アントワープの国際語用論学会で発表した。 <11-03月>本研究を進める上で、17世紀から21世紀初頭までの、時制とアスペクトに関わる文法記述、文法観、文法書の社会における役割に関する資料/文献を通して、学際的な視点から時制とアスペクトを総合的に研究することの必要性を再確認した。11-01月は、corpus等には盛り込まれていないデータを考察し、アスペクトを整理し、stativityについての論文にまとめた。02-03月前半は、本研究のこれまでの成果の一部を「認知言語学事典」における2つのチャプターの関係項目に盛り込み執筆した。3月後半は、これまで7年の研究の成果を4月の英語史研究会で発表すべく準備した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度迄は、Murrayの’English Grammar’における、進行形を中心とした動詞に関する記述の変遷と、他の文法書や書評との関わりを中心に調査を行ったが、今年度はMurray自身の手記や彼の文法書に関する様々な記述、取り扱われ方の変遷、近代・現代の評価、或いは文法そのものが一般社会にどのように受容されていたか、例えば、19世紀文学においてMurrayの名が英文法の代名詞であり、パロディーの対象ともなっていた現象などに、興味深い事実が見つかった。 また、認知文法の枠組みでの提言を発展させた形でstatesを再設定し、現代でもstateを表す進行形が口語では実際には思いの外多く使われ、重要な言語機能を果たしている事実を確認し、進行形の本質的意味機能の一つを特定できた。 Kranichは進行形にcore meaningを見出すのは不可能に近いと述べるが、本研究で捉えた進行形の機能を中心に据えると、様々な種類の進行形の振る舞いが説明可能となることを確認できた。 進行形の文献上の頻度と識字率との関係については、英国の識字率のデータそのものが見つからないため、確かなことは言えないが、先行研究で示唆されているよりずっと前から、特に庶民の口語に多かったことを推察できる文献を分析できたのは収穫だった。
|
Strategy for Future Research Activity |
前半は、これまで曖昧さの大きかったアスペクトに関わる概念を整理し、規定し直した上で、states/non-statesとして扱われてきた概念を実例の分析に即して精緻化する。その上で、特にstateとの関係について、新しくコーパス化された資料、これまでコーパス化されていない文献や実例を更に調査し、どのような場合に進行形が有効に使われているか、更に詳細な観察や考察を進め、論考をサポートするデータを集める。 後半は、学会発表等で得られた手応えと助言や指摘を受けた箇所を再検討し、細部を詰め論考をまとめて、学会誌、学術雑誌に投稿し、今後の研究に繋げていく予定である。
|
Causes of Carryover |
論文執筆に専念するため、3月に予定していた文献資料収集の時期を8月に延期したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年は3月に予定していた文献資料収集の時期を8月に行う。
|
Research Products
(4 results)