2014 Fiscal Year Research-status Report
主体性から見た「存在」と「知覚」に関係する構文の日英語比較
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25370556
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
坪本 篤朗 静岡県立大学, その他の研究科, 特任教授 (40138623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 主体性 / 自己関係性 / 次元 / copy-cleft / 純粋経験 / タイミング / 「それ」 / 中間(媒介)レベル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,昨年度の延長線上に,「主体性」の問題を「時間」の関係から,(a)主要部内在型関係節(HIRC)と(b)ト書連鎖構文(XP-NP連鎖)を取り上げ,この構文のもつ「両義性」の問題をさらに考察した.主要な論点は,以下の通りである.従来より明らかになった点は,(i)(a)、(b)共に,いわゆる「純粋経験」と呼ばれることがある「瞬間」の性質と密接に関係づけたことである.(ii)「主体性」とは,「自己関係性」をもつこと,差異を含みつつ同一性を保つこと. (a)HIRCについては,(1)パラドクスの犯人ともいえる,「自己関係性」「次元」の問題がHIRCについても当てはまる.その問題を考える上で,(2)Talmy (2000)のcopy-cleft構造が有効な説明を与える.(3)「それ」の位置づけ(その重要性については従来から主張して来た)は,従来の副詞句説とは明確に異なる.(4)「自己関係性」とは「自己が自己を含む」ということであり,いわゆる,i-within-i条件からいえば排除されるべきものであるが,そうなっていないことから,統語論的分析では扱えない性質をもつ.(5)〈自発性〉(おのずから)と〈主体性〉(みずから)の二つの側面をもつ. (b)XP-NP連鎖については,拙論に対する批判に答える形になっている.批判者は,この構文のもつ,原初的な性質を,いわば自明のこととして論じている.言ってみれば,病気の「症状」を問題にするか根本的な「病因」を議論するかの違いといえる.熱は身体の病気に対する反応であり,熱を下げる薬を与えるだけでは十分ではなく,その根本的な原因を考えてこそ,処方的な処置(考察)に納得がいくというものである.それは具体化(顕在化)したレベルの根底に,未分化なレベルと具体的に分節化するレベルを媒介する,潜在的な中間の次元を問題にするということである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度は,主要部内在型関係節とト書連鎖について,さらに考察を深めることに集中した.研究を進め,根本的な考え方をより明確にする上で,こうした批判に答えることが極めて重要だと考えたからである.やや,気にしすぎて時間を取り過ぎた嫌いはあるが,坪本(2009)で説明不十分な点について,批判論文(西田 2015)は,再度立ち戻りより詳細に述べることを可能にしてくれた.当初予定していた,「数量詞遊離」「同族目的語」等についても上記構文と同様に「両義性」があり,出来事の過程の内部に主体があるという,これら2つの構文に対するのと同じ論法で分析可能である見通しはたっている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,「主体性」との関わりから,ト書連鎖,主要部内在型関係節構文を中心に著作の形で公にしたい(原稿を出版社に渡す).坪本 (2001)では,坪本 (1998)の延長線上に「文連結」の観点から,いわば「部分」から「全体」を考えたが,同時に,「全体」から「部分」を(あるいは,「部分」と「全体」の関係をよりダイナミックに)見る必要がある(これらは,第1部と第2部として論じられるはずである).主体は出来事の過程の内部にあるという視座に立ち,「瞬間」を問題にする.「瞬間」にこそ,自己および主体といったことが問題になるからである.
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Causes of Carryover |
単純に計算ミスでした.書籍を予定以上に注文したためと思われます.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新年度分では注意したいと思います.
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