2015 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語としての日本語の語用論的能力の習得に関する縦断的研究
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25370578
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ボイクマン 総子 (椙本総子) 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50370995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中間言語語用論 / 第二言語習得 / 日本語学習者 / 発話行為 / 依頼 / 謝罪 / 縦断研究 / ポライトネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語学習を始めたばかりの日本語学習者10名(日本の大学に在学する日本語学習者)の発話行為遂行に関わる語用論的能力の発達を三ヶ月ごとに1年にわたり縦断的に研究した。研究協力者は、調査開始時には初級初期であったが終了時には中級後半または上級であった。語用論的能力の発達を解明するには、初級から上級に至る習得過程を分析対象とする研究が求められるが、日本語教育における中間言語の語用論研究は主に中上級の学習者を対象とした研究に限定されていた。そこで、本研究では初級初期から中級・上級に至る過程を縦断的に、依頼と謝罪の発話行為のロールプレイ発話の分析と学習環境についてのインタビュー調査を分析することによって語用論的能力の発達を解明した。また、比較対照として、同年代の日本語母語話者20名(男性10名・女性10名)のロールプレイ発話の分析も行った。 ロールプレイ発話の意味公式を分析した結果、依頼・謝罪ともに、当該の発話行為を達成するためのストレテジーの数や種類については大きな変化は見られなかったが、滞在期間の経過とともに対話者に応じたスピーチレベルに関わる表現に大きな変化が見られた。 スピーチレベルはネガティブ・ポライトネスに関わる言語形式であり、学習者は、対話者の親疎・上下関係によってスピーチレベルを使い分けるという語用論的能力を発達させることがわかった。そして、スピーチ・レベルの習得は、目標言語に対する接触頻度よりもその学習者が対話者との人間関係にどれだけ意識的かにより母語話者の発話に近づくかが決まること、学習者は独自の社会言語用論的なルールを作っていること、さらに、日本語母語話者が用いるスピーチ・レベルに関わる表現の習得が進んでいても、敬語表現の使用は日本語母語話者と違いが見られることがわかった。
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