2014 Fiscal Year Research-status Report
国際家族と学校・NPOをつなぐ母語・バイリンガル教育支援―言語資源育成の視点
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25370596
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
松田 陽子 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (80239045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 美紀(寺尾美紀) 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10379224)
久保田 真弓 関西大学, 総合情報学部, 教授 (20268329)
野津 隆志 兵庫県立大学, 政策科学研究所, 教授 (40218334)
落合 知子 神戸大学, 国際協力研究科, 研究員 (50624938)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 外国につながるこども / 母語 / バイリンガル / 言語資源 / 国際家族 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 本年度は、昨年度に作成した母語学習支援のための6言語に多言語化したホームページの運用を充実させるための開発研究および、研究発表を行った。多言語化されたホームページについて、これらの言語の国際家族の母語話者、母語学習支援者の人たちからのコメントの聞き取りを行い、内容の精査、アクセスの改善についての検討を行った。また、アクセスを増加させるためのFacebookの利用も開始し、情報提供を行うようにした。 2. また、トヨタ財団の支援による「外国人児童生徒の言語形成を保障するバイリンガル教育環境推進のための政策提言プロジェクト」との共同研究として、ほぼ月1回の研究会を行った。これらの研究成果をもとに提言案を作成し、これについてのシンポジウムを開催し、外国にルーツのある若者たちにとっての母語や日本語についての意見を聞き、参加者からの多数の意見も聴取した。それらを反映したうえで、兵庫県の母語・日本語のバイリンガル教育の進展に向けた政策提言を作成し、関係機関(兵庫県教育委員会、兵庫県私学総連合会、神戸市教育委員会、兵庫県国際交流協会、神戸市国際協力交流センター)に提言を提示した。 3. 教育実践の開発として、神戸市にあるベトナム系家族の子どもたちが多数在籍する学校で、ベトナム語と日本語の二言語でビデオレターを作成し、ベトナムの小学校の子ども達とビデオレターで交流するという取り組みを行った。これはアイデンティティ・テキストの考え方を援用したもので、i-padを使ったビデオ作成によって、二言語での表現力を高め、コミュニケーションへの意欲を亢進することに役立つことを確認した。 4. 韓国の研究者とも交流を深め、韓国での国際家族への取り組みの状況を精査し、シンポジウム・研究会等で、相互の類似した問題を検討し合うことができた。今後の韓国との共同研究を深化させていく基礎研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 多言語化したウェブサイトの活用の研究について、多方面での研究発表や研究会で、多くの母語教室関係者、国際家族の保護者、教員等からの意見聴取を行うことができた。 2. 国際家族の青年たちの言語意識の問題の聞き取り、言語資源としてどのように母語力を活用しているかという状況の把握の基礎研究を行うことができた。言語資源の概念の深化についての分析はまだ終えておらず、次年度にさらにデータを収集して分析を行う。 3. 地域のNPO(たかとりコミュニティセンター)との共同研究で、母語についての意識を探索するビデオの作成への協力や、関係者を対象としたシンポジウムの開催を通じて、研究課題についての問題意識をさらに広げることができた。それらの成果をふまえて「母語教育支援についての政策提言」を兵庫県の関係機関に対して共同で行うことができた。 4. 計画に基づき、昨年度のカナダ調査から得た知見をもとに、アイデンティティ・テキストの手法を援用したバイリンガル・ビデオレターの作成による二言語学習効果の研究を行った。神戸市内の小学校のベトナム語の母語教室で行ったこの学習活動の記録を行い、その成果の発表会も実施したうえで、学習効果の研究の基礎研究を実現できた。さらに、ベトナム系の子ども達の家庭での母語学習状況と二言語の語彙力調査を行い、論文発表に向けて、準備をしている。 5. 国際調査として、平成26年8月に韓国調査を行い、複数の地域で親が国際結婚の児童への教育支援、言語支援の実態について詳しい情報を収集した。韓国釜山大学から招聘された研究者との国際家族に対する支援状況などについての情報交換も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 「言語資源」の視点からの研究をさらに深化させるため、外国にルーツのあるバイリンガルの青年たちの言語習得状況とその活用状況の調査をインタビューによって緻密に聞き取ることで、どのような資源活用が行われ、そのためのどのような学習が行われてきたかを精査し、個別の要因分析を行う。また、ベトナムにルーツのある子ども達について、家庭での母語学習状況と二言語の語彙力についての調査を継続して行い、学校と家庭での学習の連携についての実証研究を行う。そして、これまでの研究成果と今年度のインタビュー調査をはじめとする種々の調査研究の成果にもとづき、母語・日本語のバイリンガル教育戦略を、国際家族や、学校関係者、政策立案者に、さらに具体的な提言を行っていく。 2. 26年度に実施したi-padの利用によるビデオレターの作成を通した学習の効果の検証や、その他のICTの活用による学習方法のさらなる検討を行い、教育支援の方策を探求していく。さらに、本研究で作成しているホームページとFacebookによる情報提供、関係者、研究者との意見交換のネットワーク形成の課題についての研究を深化させる。 3. 韓国、アメリカの関係者との共同国際シンポジウムによって、国際的な視点からの課題研究と国際的な情報発信をめざし、政策提言の効果を高める方策を探る。 4. 3年間の研究のとりまとめとして、これまでの調査研究の成果を総括し、他の研究者や当事者達との意見交換も反映し、成果をホームページで公開することをめざす。
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Causes of Carryover |
3月に調査のための録音データの文字起こしを外部機関に委託して行ったものが、当初の見込みより安価にできたため、残額が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、さらに収集録音データを増やす予定であり、その文字起こしの費用に当てる計画である。
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