2013 Fiscal Year Research-status Report
中学校英語の音声インプット量分析に基づく音韻語データベースの構築
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25370622
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村尾 玲美 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (80454122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神白 哲史 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (90439521)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中学英語検定教科書 / 音韻語データベース |
Research Abstract |
一般的な日本の中学校課程で3年間英語を学ぶことで、学習者がどのような英語音の連鎖にどの程度触れることになるのかを明らかにするため、本研究では検定教科書から得られる音声インプットに基づく音韻語データベースを構築することを目的としている。日本の中学校・高等学校の教育内容として扱われる語彙のインプットに関しての研究は比較的多いが、それは文字の連なりを元にした解析であり、実践的コミュニケーション能力として真っ先に考えられるべきスピーキング・リスニングにおける語彙を考える際には、それらの研究結果を直接的に当てはめることは難しい。一般的な日本人英語学習者が中学校3年間でどのような音の連なりにどれくらいの頻度で触れているかを解析するために、音の連なりに基づく音韻語データベースを構築することは不可欠であると考える。本年度は、まず、日本の中学校で使用されている6種類の検定教科書の音韻データ化を目指した。音韻データ化に関しての手法が確立されているわけではないため、様々な試行錯誤を繰り返すことで、正確で、且つ、情報量が多いデータベースの構築を目指している段階である。データベースから得られる情報としては、現在のところ、1)音素連鎖頻度、2)音節連鎖頻度、3)単語連鎖頻度、4)品詞連鎖頻度が考えられ、それぞれの情報からどのような教育的示唆が得られるか、慎重に検討している段階である。実際に音韻コード化を行ってみると、参考とするべき辞書等に記載されている音節の区切りは概ね形態素に基づいているため、実際に発話されている音節の区切りと異なる事が多々あることがわかった。従って、実際の音節の使用事例として適当であると考えられる歌での音の区切りを参考として、音節の区切りを正確に規定している段階である。既存情報が利用できないことからも、本研究の新規性、重要性がうかがい知れるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、中学校の英語検定教科書で取り扱われている音声インプットの音韻コード化が6社分、全18冊に関してほぼ完了している。今後、データを整え、分析に耐えうるデータベースとして精度を上げていく段階にある。現在、音声に基づいた正しい音の区切りをデータベースに反映する作業を行っており、データベース構築としては最終局面にあるといえる。作業過程で具体的課題や問題点等も明確になり、修正にかかると予測される時間と手間を考えれば概ね順調な進展の過程にあると考えられる。当初の計画では、26年度にデータベースの整形の完了を目指しており、研究計画には、教育現場の実地調査が組み込まれていたが、データベース構築自体には直接的に関係しないため、客観的データで信頼性と妥当性を有するデータベース構築を優先することにした。既存情報がそのまま利用できるわけではないことから、データベースの構築、特に音声のコード化に当初想定していたよりも多大な時間と労力が必要であると気がつかされたからである。また、実際の現場に訪れるのは、データベースの分析で得られることになる一般的日本人英語学習者の音の連なりへの親近性データの妥当性を学習者に確認する際の方が、より示唆に富む情報を得られると考えた結果でもある。今後は、一日も早いデータベースの完成を目指し、データの精緻化に取り組む。研究体制もこの1年で確立され、研究材料も確保されていることから、今後も順調な研究活動が為されるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、三つの課題を遂行する予定である。まず、第一に、音声情報を正しくコード化した音韻データベースを完成させる。個々の音素を正確に記述するだけでなく、実際の教科書CDを確認し、音節を正しく反映させる。形態素の扱い等々、検討すべき事項を確認し、データベース作成の手順を正確に記述し、データベースの位置づけを明確にする。第二に、構築したデータベースの分析を行う。音の連なりの種類や頻度を分析するため、北陸先端科学技術大学院大学の自然言語処理学講座が提供するngramという共起頻度計算プログラムを使用することを予定していたが、このプログラムでは頻度2以上の連鎖しか抽出されないため、頻度1まで抽出できる他のプログラム(morogram)を使用することを検討している。分析を通して学習量やインプット量を明らかにし、それが習得や処理効率に与える影響を考察する。第三に、データベースの分析から得られた結果から、一般的日本人英語学習者が困難を感じる音の連なりに関してのテストを作成する。学習における出現頻度の低さから、実際に学習者がその習得に困難を感じている項目を予測に基づいて明らかにする手立てを検討する。 最終年度である平成27年度は、作成したテストを用いて、音素連鎖の出現頻度が実際に中学生の英語音の習得にどう関係しているかを調査する。音節の把握等、文字の連なりに基づく情報にどの程度影響されているか等、調査すべき日本の英語教育における音声の取り扱いに関する問題点は多く存在しているものと考えられ、継続的な調査を更に検討することになるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請当初は1冊2万5千円のCD-ROM付きの教科書マニュアルを3学年6社分購入する予定であった。しかし高額な出費をしてCD-ROMから教科書データを取り込むより、必要な部分を教科書から自ら書き起こした方がよいと考え、その作業をアルバイト学生に依頼したことから、当初計上していた申請額から繰越額が生じることとなった。 本年度は音韻語データベースを完成させ、構築したデータベースの分析を行う予定である。分析を行う前に、データベースが完成した時点でまず、専門家と中学校教員に対してヒアリングを行う予定であり、繰越額はそのための旅費と謝礼金にあてる。次に、データベースの分析から得られた結果から、一般的日本人英語学習者が困難を感じる音の連なりに関してのテストを作成する。テスト作成時に、テストの難易度等について再度、中学校教員にヒアリングを行う。ヒアリングおよびテスト実施の謝礼として繰越額を使用する予定である。
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