2014 Fiscal Year Research-status Report
中学校英語の音声インプット量分析に基づく音韻語データベースの構築
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25370622
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村尾 玲美 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (80454122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神白 哲史 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (90439521)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 英語教育 / 音声指導 / 教材分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一般的な日本の中学校課程で3年間英語を学ぶことで、学習者がどのような音や音の連続にどの程度触れることになるのかを明らかにするため、検定教科書から得られる音声インプットの内容と量に基づく基礎データベースの構築を試みた。また、データ化された教科書の音韻情報を量的に分析し、以下の2点について調査を行った。 1)中学校の英語検定教科書では、どのような音韻語をどのぐらいの頻度で与えているか。 2)中学校の英語検定教科書では、どのような音素と音節をどのぐらいの頻度で与えているか。
分析の結果、18冊分の教科書データの中で18回以上出現した音韻語の種類数は、2音節で123種類、3音節で27種類、4音節で5種類であった。これらは、単純計算した場合、中学3年間で3回以上教科書に出てくる音韻語となる。5音節以上の音韻語は3年間で3回以上出てくるものは無いことがわかる。2音節の音韻語は種類、頻度ともに多いが、弱音節のみから成るものが多く、より大きな音韻語の一部分となるものに過ぎない。よって、実質的な音韻語のインプットはほとんど無いに等しいと考えられる。 音節頻度の分析から、教科書18冊分の音声は2,620種類の音節の組み合わせから成り、トークン数は54,624であることが明らかになった。2,620種類の音節のうち、頻度の高い上位100種類の音節によって教科書の51.55%がカバーされていることがわかる。上位200種類では64.84%、上位300種類では72.93%であり、上位500種類で8割以上の教科書音声をカバーできることがわかる。音声教育においては、上位100種類の音節の音を集中的に指導することが効率的だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは、1年目に中学校英語検定教科書に出現する音韻語のデータベースを構築し、2年目にデータベースの分析を通して中学3年間でどのような音や音の連続にどの程度触れることになるのかを分析し、3年目に音韻語のインプット量と定着率の関係について探る実証研究を行う計画である。現時点で音韻語データベースの分析が完了しており、教科書から得られる音韻語のうち頻度の高いものとそうでないものが明らかになっている。分析結果については平成26年度に全国英語教育学会にてポスター発表し、中部地区英語教育学会紀要でまとめている。最終年度は、データベースの分析結果を基に、中学3年生と高校1年生を対象とした音韻語の定着率に関する実証研究を行う計画であり、そのための準備が概ねできていることから、研究の到達度は概ね順調といえる。今後、分析方法と分析結果を再度確認し、実証研究のための実験項目を精査していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は研究代表者の産前産後・育児休暇のため1年間研究を中断するが、研究を再開する平成28年度は、平成26年度の分析結果に基づき、音韻語のインプット量と定着率の関係について探る実証研究を行う。
調査対象は、中部地区と関東地区の中学校約6校に在籍する中学3年生および、高等学校約6校に在籍する高校1年生である。調査目的は、中学校の英語検定教科書でひととおり勉強し終わった中学3年生の12月および高校1年生の4月の時点で、教科書に頻繁に出現した音韻語がどの程度定着しているのかを、出現頻度との関係で明らかにすることである。音韻語の定着とは、本研究では、視覚提示ではなく音声提示された音韻語を正しく聞き取ってそれを再現できることと定義する。音韻語の聞き取りと再現によって定着率を測るため、本研究では音韻語を含んだセンテンスディクテーションテストを行う。
具体的には、18冊分の英語検定教科書から成る音韻語データベースのうち、18回以上の頻度で出現する27種類の3音節連鎖(a lot of, I want to, how aboutなど)を調査項目とする。センテンスの長さは、短期記憶に若干の負荷がかかるよう10語から12語とし、センテンス中での音韻語の再現率をその他の再現率と比較する。また、音韻語の再現率と音韻語の頻度に相関が見られるのかどうかも調査する。一定の頻度以上で再現率が天井に達し、相関が見られなくなるのであれば、その頻度が音韻語定着のために必要な頻度だと考えられる。音韻語の再現率とその他の箇所の再現率に違いが見られず、頻度との相関も見られない場合、パターンに触れる頻度以外に聞き取りに影響する要因として、a) 知覚上の目立ちやすさ、b) パターンの単純さ、c) 形態音韻論上の規則性、d) 意味の透明性、e) 統語範疇、f) 母語の類似性なども併せて考察する。
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Causes of Carryover |
申請当初は、8月に福岡大学で開催された外国語教育メディア学会全国研究大会と、9月に広島市立大学で開催された大学英語教育学会国際大会に参加する予定であったが、研究代表者の妊娠により参加を見送ったことにより、当初計上していた旅費申請額から繰越額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、中学3年生と高校1年生を対象に、音韻語のインプット量と定着率の関係について探る実証研究を行う予定である。実験を実施するにあたり、協力校の講師に事前にヒアリングを行って綿密な計画を立てる必要があるため、繰越額はそのための旅費と謝礼に使用する。また、本プロジェクトの最終的な成果を学会誌に投稿するため、エディテージの英文校正サービスを利用する。
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Research Products
(2 results)