2014 Fiscal Year Research-status Report
積極的なコミュニケーション力を養成するための英作文教材の開発研究
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25370647
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Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 史朗 八戸工業大学, 感性デザイン学部, 准教授 (20316342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 哲徳 東北工業大学, 共通教育センター, 准教授 (40265137)
斎藤 明宏 八戸工業大学, 基礎教育研究センター, 助教 (90632084)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教材開発 / 英作文 / コミュニケーション能力 / リメディアル教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来型の英作文テキストを使用した場合、学習者は多様な表現の可能性を意識するあまり、自信を持って英文を構成しにくくなっている。本研究費を活用して開発中のテキストは、英文構成のルールを絞り込むことによって、短い英文を不安なく発信する力の育成を図ることに特化した。 平成26年度は、前年度までに明確化した既存テキストの問題点と必修ルールのレイアウトに関する検討結果を踏まえて、テキストの執筆を中心として研究活動を行っている。すでに試作品は完成しており、現在試作品を授業で使用している。その新規性は第一に、上述のルールの単純化にある。主語+動詞(+補語・目的語+副詞)という基本スタイルを徹底することで、学習者が間違いを恐れずに英文を作成できるよう工夫した。また、句や節といった文章のクラスターとその位置関係を丁寧に解説し、それを反映した練習問題も用意している。第二に、従来の文法列挙型のデザインを見直し、構成法を学ぶ部分と修飾関係を学ぶ部分に章立てを整理した。構成法が十分身につくよう英文構成の基本と動詞形を第1~2章に置き、それに続く第3~5章には、名詞修飾と副詞(名詞以外の修飾)、名詞(名詞句/名詞節)を配している。それ以外の仮定法のような文法は、指導上の利便性を考慮してAppendixとして巻末にまとめたが、そこでも可能な限りクラスターを用いて文章が作れるよう工夫している。 平成26年度にはまた効果測定も行っている。テキストの主要部分となる英文の構成法について、断片的にハンドアウトとして授業で用い、その前後に習熟度を調査した。八戸工業大学1年生の2クラスについて平均偏差値を揃え、一方では上述のハンドアウトを利用し、もう一方では既存テキストを用いた文法項目指導型の授業を行って、英作文能力を比較した。その結果としては、ハンドアウトを利用した場合、英作文能力が有意に伸長していることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、1八戸工業大学および東北工業大学にて試作したテキストを授業で実際に使用すること、2学習効果を確認するためアンケート調査と共通試験を実施すること、3試作の対象を拡大し積極的なコミュニケーションに必要な学習項目を網羅したテキストの全体像を構築すること、4執筆者による校正のほかネイティブ・チェックを行うこと、5次年度の授業への本格導入に備え業者に製本を委託して、教科書の体裁を整えること、6教育効果の検証・分析を行うこと、7学会での成果発表のため研究成果や教育効果について取りまとめることを、平成26年度の研究実施計画として掲げていた。 このうち、1~2については授業カリキュラムの運用上、授業への試作品の導入と学習効果の確認が、八戸工業大学のみの実施にとどまっているが、研究活動に支障はないため90%の達成率と評価する。3は本研究の主眼となる執筆作業である。章末におく総合的な演習課題が未完成であるものの、根幹となる説明部分と対応する練習問題についてはほぼ執筆を終えており、90%の達成率と評価する。4は40%の達成度にとどまっている。試作品の作成段階で執筆者の校正は繰り返し行なったが、ネイティブ・チェックはテキストの一部に限定されたためである。一方、5はすべて完了しており、達成度は100%である(支出は平成27年度)。また、6と7については、データ収集と分析に着手しているが、考察にはなお時間が必要であり、進捗度は60%と評価する。なお、研究成果は、今年度の日本英文学会東北支部第70回大会での発表を目標に準備を進めている。 以上を総合すると、研究の主眼である3と5が遅滞なく進捗しており、全体としては80%程度の達成率と自己評価する。平成27年度はテキストの充実を図ることは当然であるが、教育効果などの分析に注力することで、当初の研究目的は完成させることができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
テキスト作成という研究目的の性格上、研究者相互のコミュニケーションが、最も重要な推進方策となっている。平成27年度は、同26年度と同様に、テキストの執筆と校正、運用上の問題点の洗い出しの他、効果の分析と研究成果報告なども共同して行い、緊密に研究者間の連携を図る必要がある。 そこで本研究費を活用して、研究者がじっくりと協議する時間をさらに設けることにしたい。授業で運用しやすく、かつ、瑕疵のないテキストに仕上げるためには、個々の例文や説明一つひとつについて、複数の視点からのチェックや妥当性の評価が必要となるからである。とりわけ、テキストの校正には十分な期間を準備する必要がある。また、練習問題の完成後には、正答を別冊子で準備し、各設問の妥当性なども検討しなければならない。いずれも複眼的なアプローチが不可欠な作業であり、また、ネイティブ・チェックを含む複数回の校正も必須である。適切な時期に十分な打ち合わせを行いたい。 平成27年度はテキストの試作品を本格的に授業で用いる段階にある。実際、八戸工業大学においては1学年のクラスで試作品を活用した授業を行っている。今後、東北工業大学でも授業で使用する予定となっており、運用上の問題点の蓄積が必要となっている。そこで、クラウドサービスを利用した意見の集約を検討している。簡便で効果の高い方法を用い、研究者間で意見を共有したい。 研究成果の発表については、斎藤を中心に、その他の研究者がサポートする形で準備を進めている。事業の性格上、試作品の利用拡大とともにデータが蓄積されるが、客観的な考察に必要十分なデータを集積した時点で、テキスト利用のメリットを具体的に示す論考を用意する。 研究の最終的成果として、テキストの出版を予定している。今年度は、出版に向けた準備も進めたい。出版社等と適切にコンタクトを図ることで、社会への研究成果の還元の円滑化を図る。
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Causes of Carryover |
本研究はテキストの作成に経費の大半を支出する。次年度使用額のうち、172,000円は平成26年度中に発注した試作品の印刷費であり、納品が4月になったため繰り越されたものである。また、謝金については作業工程の都合上、ネイティブ・チェックに十分な経費を支出できなかった。作成途中にあるテキストについて、時間をかけたネイティブ・チェックをしても、望ましい成果は得られないと判断したためである。旅費については、研究者相互の打ち合わせは十分に行っているものの、調査のための旅費を使用していない。サンプルなどによる参考文献の収集が相当程度順調に進んだため、現在までの執筆活動には資料の大きな不足が生じず、次年度に有効利用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、平成27年度には、上述の通り昨年度発注の試作品印刷費が計上される他、夏季以降にそれとほぼ同額が、試作改訂版の印刷に支出される予定である。従って、次年度使用額の相当部分が試作に係る印刷費に充当されることになる。また、試作改訂版の印刷前、および、研究の最終段階において、複数回のネイティブ・チェックを行うとともに、ネイティブ・スピーカーによる自然な例文の作成に係る謝金にも支出が見込まれている。さらに、研究者間での打ち合わせを充実させるとともに、テキストの完成度を向上させるための調査や学会発表等の旅費も計上することになる。 これらはいずれも研究目的の達成には欠かせない使途であり、十分な支出予定も計画されている。以上のことから次年度使用額が生じてはいるものの、平成27年度の研究活動に支障はなく、かつ、研究費を有効に活用した活動が遂行できると判断している。
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