2014 Fiscal Year Research-status Report
外国語の音声教育において学習者の自律的学習を支援する指導法と教材の開発研究
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25370650
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中川 純子 慶應義塾大学, 総合政策学部, 講師 (80645961)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 音声学 / 外国語教育 / 教材開発 / ドイツ語 / 国際情報交換 / ドイツ / 教授法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は発音指導法の研究・調査の他、発音教材の本冊及び、音声教材、視聴覚教材の制作を行った。 [学会発表] 2014年9月にドイツのMarburgで開催されたGAL(Gesellschaft fuer Angewandte Linguistik)の年次大会にて連携研究者の立川睦美氏とともに日本人のドイツ語発音についての実験と分析の成果を発表し、同年、12月に東京で開催された日本音声学会の研究発表会にて、実験結果を教材に生かすコンセプトについての発表を行った。 [実験授業]慶應義塾大学の特別企画である『実験授業』に応募し、本研究の教材及び教授法を実験的に用いた授業を行った。またその成果を『慶應義塾大学外国語学研究紀要』第11号(2015年3月)に発表した。 [実験及び分析]昨年度に引き続き、日本人のドイツ語の発音の中でとくに聞き手の理解に支障をきたす音声的特徴についての調査実験を行った。昨年度はグリム童話の一節を学習者が朗読したものを録音し、ドイツ語話者にトランスクリプションを依頼し、さらに朗読の印象などのインタビューを行った。この実験に基づいて聞き手の理解に最も支障になる問題点を単音及び文レベルで明らかにした。今年度はこの結果を検証する為に、被験者を変え(8人)、テキストジャンルをニュース報道に変えた。現在、この結果を分析中で、8月に上海で行われる世界ゲルマニスト会議(IVD)にてこれまでの成果と併せて口頭発表の予定である。 [教材(本冊とDVD、CD、HP)]日本語の音韻特徴を利用し、ドイツ語話者の理解に支障となる音を効果的に習得する為の教材づくりを目指し、現在、本册とそれに付属するDVDで提供される視聴覚教材の作成を行っている。なおDVD作成にあたっては、発音指導の専門であるネイティブスピーカーに協力を依頼しドイツで録音を行った。HP、CD制作は現在着手したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な手順などにおいて当初の計画は部分的に修正されたが、内容と基本方針には変更はなく、順調に進んだ。基本的には実験と検証、および教材の作成に関して平成25年度の作業を継続した。今年度の主たる課題は視聴覚教材の作成であった。 [教材作成] 1) 録音:当初は標準ドイツ語は国内でスタジオ録音を行う予定であったが、ドイツ在住で発音及び朗読の専門教育を受けた専門家に録音の依頼する事が可能となったこと、私設の録音スタジオを利用できる環境にあった事、またハレ大学の図書館など関係施設が利用できることから、メインの録音をドイツのハレで行う事とした。現在2回録音のため渡独し、8割程度の録音を終えている。一方、日本国内では、それぞれ出身地が異なるドイツ及びオーストリア人の男女二人に依頼しHP用の音声録音を行った。 2)教材媒体:当初は視聴覚教材としてはHPとスマートフォンアプリを予定していたが、現在はDVD、CD、HPで製作中である。DVDとCDを加えたのは、インターネット環境ではない教室や学習環境への対応を優先したからである。結果として、メインをDVDとCDにおき、DVDではゲーム感覚も取り入れ、自習と教室使用の両方を視野に入れた構造で進めている。DVDが独立して用いる事が出来るのに対して、CDはリスニング訓練のためであり、紙ベースの教材とあわせて使う事を想定している。一方HPは、DVDを補うものとして位置づけた。HPはまだ着手したばかりであり、次年度に完成予定である。 スマートフォンアプリに関しては、機種依存の問題から種々の制約がある事、今回あらたにDVDを加えた事などから今回は制作を行わない事とした。 [学会発表]9月にドイツの応用言語学会にて、12月に東京で開催された音声学会で口頭発表を行った。いずれにおいても活発な意見交換を行うことができ、課題の遂行の為に大変に有用であった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたり、DVD、CD、HP、書籍という4つの媒体を連動させた発音教材を完成させる。引き続き、聞き手の理解に最も影響を与える発音上の問題を精査するとともに、母語の音韻知識・経験を利用し、効率的にかつ楽しく継続的に学べる教材内容と媒体の設計を研究していく。 研究課題全体の成果は8月に行われるIVG(世界ゲルマニスト会議)で発表するとともに、ドイツで発行されている応用言語学会の学術誌“Sammelband Marburg“(GAL)にて発表の予定である。 [その他]前年度から引き続き、ドイツのLudwigshafen 大学Ostasiatische InstitutのAdachi-Baehr講師の協力で、本課題のコンセプトでドイツ語母語の日本語学習者の発音上の問題に対応する教授法、教材を開発する為の準備を進めている。
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Causes of Carryover |
今年度で終了する予定であった教材付属の音声媒体用録音の一部が次年度に移動されたため、その分の予算が翌年に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成 27 年度(最終年度) はまずHP、CD、DVDの仕上げ、紙媒体との連動性など教材全体の最終的なチェックと仕上げを行い、学習教材の形として編集を行う。予算の使途としてはCDの作成と、DVD用の録音にかかる諸経費がある。さらにここまで行ってきた指導法の開発と教材作成の成果を8月に上海で行われる世界ゲルマニスト会議で発表するために出張する。年度の最後には教材としての出版費に使用する。
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