2016 Fiscal Year Research-status Report
教授データベースを利用した自立的英語多読学習支援システムの開発
Project/Area Number |
25370683
|
Research Institution | National Institute of Technology, Toyota College |
Principal Investigator |
吉岡 貴芳 豊田工業高等専門学校, 電気・電子システム工学科, 教授 (30270268)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 多読 / 英語 / ICT / 教授データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
個々の学習者に応じた学習教材(ここでは図書)を自動推薦するためには,学習者自身のレベルをシステムに入力する必要があり,開発中のシステムでは学習者自身が自己評価を入力している。しかし,平成25年度に一部の学習者の状況を分析した際に明らかになった「読み滑り」により,入力される自己評価が実際の能力を表していないことが懸念された。読み滑りによって開発中の教授データベースが十分に機能しないこともあり得るため,学習者に適切な自動図書推薦ができなくなるためである。そこで,読書時の状況を把握するために,平成26年度からは読書中の内容理解度評価のためのアイマークレコーダ装置を用いた読書状況の分析も開始したが,平成27年度末になり高額なアイマークレコーダが動作不安定になったことにより,平成28年度は安価なセンサーとタブレットPCを用いた計測ソフトウェアの開発を行った結果,装置の有効性が示唆された。 一方で,平成27年度末に実施した学生アンケートの自由記述として得られた回答に,読書を継続させる理由として様々なものがあったが,特に,読書そのものの楽しさによるものが学習を促進するという内的な動機付けに関する記述が多く存在した。そこで,特に中級者以上の学習者にとって意外性のある図書を提供することが個人活動である読書を継続させることに着目し,そのための推薦アルゴリズムの開発を継続して行った。 また,平成27年に開始したスマートフォンを利用した初めて英語多読を体験する学習者向けの,チュートリアルと名付けた英文体験用アプリケーションソフトウェアの開発は,平成28年度は新たな開発言語へと移行し開発を継続して行っている。 しかし,教授モデルをデータベースとしてシステムに載せるフォーマットは平成28年度中までに完成させることができなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本校学生や卒業生を中心に行っていた英文多読学習支援システムの再構築は,これまでの作業を反映させるため作業量が増えたため,遅れが生じた。そこで遅れを取り戻すため開始した外部業者との協力のため,仕様策定を開始し,平成28年度末までに終了した。また,一般社会人へのシステム利用の呼びかけが社会全体の利益に資すると考え,完成後のプロモーション事業のため行った公益財団法人ソフトピアジャパンの産官学による協働プロジェクトに,外部業者,報告者および研究協力者,および岐阜県多治見市図書館とで協同で行った申請が受理された。さらに,教員が持つ指導履歴を元に英文多読初学者向けの典型的な学習手順をパターン化することができたが,前述の作業量増加のため,このパターンをシステムに載せるフォーマットにするまでには至らなかった。 一方で,英文読書中に内容をわかったつもりで読み飛ばしをしている「読み滑り」の状況を判定する方法を探るための多読時の眼球運動の停留特性の経年変化を分析するために,あらたにUSB接続可能なアイトラッカーセンサーと,WindowsタブレットPCを用いたアプリケーションソフトウェアを開発する必要があった。昨年度までは実際の図書を手に持って読書している際の眼球運動を測定できたが,今年度のセンサーでは画面上を目で追う際の眼球運動を測定するものであったため,図書の一部を画面上に表示し,その文章を読書する際の眼球運動測定と,データを保存する機能を開発する必要があった。また,新たに開発したアプリケーションと,文章を表示するアプリケーションとの連携に問題が生じたため,開発に時間を要した。年度末までには,学習3年目のある学習者に対して,読書中の眼球運動を測定することができ,昨年度のデータと比較したところ装置の有効性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
初学者向けに,指導履歴を元に編纂した典型的な学習手順をシステムに載せるフォーマットを確定し,そのデータベース開発を完了させることで,英文多読学習支援システム再構築を完了させる。基本機能を一般社会人へ提供するために,地域図書館と連携したプロモーションを行っていくとともに,利用者にご協力いただきシステムの検証を行う。 初めて英語多読を体験する初心者向けには,平成27年から開発を開始した英文多読体験用チュートリアルソフトウェアを完成させ,一般社会人へ公開すべく準備作業を行う。 中級学習者向けには,学習進度に適した自動図書推薦開発のためのアルゴリズムについて研究を継続し,推薦の意外性について検証を行う。 学習状況の分析のために昨年度開発した装置(安価なアイトラッカーセンサーとWindowsタブレットPCを利用)の改良を継続し,読みの経年変化を分析することを目的として同一学習者が多読学習の1年目から4年目までの英文多読中の眼球の停留がどのように変化するかを分析するための実験を行う。
|
Causes of Carryover |
本校学生や卒業生を中心に行っていた英文多読学習支援システムの再構築は,これまでの作業を反映させるため作業量が増えたため,遅れが生じた。そこで遅れを取り戻すため開始した外部業者との協力のため,仕様策定を開始し,平成28年度末までに終了した。また,プロモーション事業のため行った公益財団法人ソフトピアジャパンによる産官学協働プロジェクトへの企画提案申請書作成を行った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により,英文多読学習支援システム再構築を完成させるために費用が必要である。また,自動図書推薦アルゴリズムの研究や,アイマークレコーダを用いた眼球運動測定の研究を進めるためにも費用が必要である。 なお,研究成果の報告は平成29年度の国内学会,および東京で開催される国際会議ERWC4(The Fourth World Congress on Extensive Reading),日本多読学会,Japan Association for Language Teaching (JALT),および日本工学教育協会JSEEなどでの報告する予定であり,それらのための旅費や参加費,および同様の教育研究を行う国内外の大学等との間での情報収集のために旅費が必要である。
|