2013 Fiscal Year Research-status Report
日本語を母語とする成人英語学習者の主語習得における「捉え方」意識高揚と頻度の効果
Project/Area Number |
25370706
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
戸出 朋子 広島修道大学, 人文学部, 教授 (00410259)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 捉え方 / 顕在的指導 / 用法基盤の第2言語発達 |
Research Abstract |
日本語を母語とする成人英語学習者の主語―述語構造の習得困難性が指摘されている。話題―解説構造が色濃く主客未分の認知を典型とする日本語の母語話者にとって,主体と客体を区別して事態を認知する英語の典型的なとらえ方はなじみが薄く,それが問題の背後にあると考える。筆者は,認知文法とその流れをくむ用法基盤の第2言語習得理論に基づき,A)英語的な事態のとらえ方のイメージスキーマを提示する顕在的指導と,B)タイプ頻度の高い事例産出練習が効果的だと仮定した。大学生を対象に実験を行い,A)B)を組み合わせた指導とB)のみの指導の効果を,談話レベルの筆記産出(事前・事後・遅延テスト)によって検証した。エッセイ中の義務的環境において主語が使用されているかどうかで採点し,分散分析によって検証したところ,B)のみの指導は効果が確認されなかった。A)B)を組み合わせた指導では,直後テストで効果が表れたが、遅延テストで後退し,B)のみの指導との有意な差が見られなくなった。この分析に加えて,エッセイ中の節を,1)指導の産出練習で用いられていた動詞を含む節と,2)指導の産出練習で用いられていない動詞を含む節に分類し,事後テストと遅延テストそれぞれにおける2群の得点の差を,1)と2)別々に比較した。その結果,指導で用いられた動詞を含む節(つまり1)のときは,A)B)組み合わせた指導をされたグループが,事後テスト・遅延テストどちらにおいても,B)のみのグループより有意に得点が高かった。指導で用いられていない動詞を含む節(つまり2)のときは,A)B)組み合わせた指導を受けたグループの事後テストでの効果が遅延テストで保持されなくなっていた。このことは,とらえ方顕在的指導は抽象化への急激な進歩に貢献するわけではないが,用法基盤の学習を促進するということが言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、捉え方意識高揚を加えた指導の筆記表出における主語・述語構造の学習効果を検証する実験を行い、研究発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度から,捉え方意識高揚がスピーキングにおける主語・述語構造の使用にどのような効果があるかを検証する。パイロット研究を現在行い、指導方法の調整を行っているところであるが,それをさらに進め,指導方法を確定し,効果検証実験を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では平成26年度から行う予定であるスピーキングでの捉え方意識高揚指導を、予定より早く実験デザインが計画できたので、25年度末から取り組むことにし、研究協力者への謝礼金の費用として前倒し請求を行った。しかし、パイロット実験において期待したような結果を得られず、その結果、本実験を平成25年度内に行うことができなかった。次年度使用額は、その分の残額である。 当初の計画通り、スピーキングでの捉え方意識高揚指導の効果検証実験を実施し、参加者への謝礼金(単価5000円、27名分)として使用する予定である。
|