2016 Fiscal Year Annual Research Report
Case Study on Novice Secondary School English Teachers' Possible Selves
Project/Area Number |
25370728
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
熊澤 雅子 桜美林大学, 言語学系, 講師 (20386478)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | teacher development / teacher cognition / teacher identity / possible selves / narrative inquiry |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大学の教職課程に在籍する学生の英語教員としての未来像、特に「コミュニケーション能力を育てる英語教育(Communicative Language Teaching、以下CLT)」に関する理想的自己の変化を調査したものである。初年度の30名超のアンケート調査に始まり、最終的には3名の研究参加者の大学2年次から教員1年目までの4年間の変化を捉えるためインタビューや授業観察から継続的にデータを収集した。データ分析はnarrative inquiry等の質的手法を用い、possible selves theoryを理論的枠組みとして、個々の独自性とともに類似性にも注目し、研究参加者の英語教員としての理想的な未来像を、それぞれを取り巻く環境や個人としてのライフストーリーの中で理解することを目的とした。 分析から得られた知見のうち3点について述べる。第一は、同じ教職過程に在籍する3人の研究参加者がCLTについて異なる理解を有していた点である。先行研究では教職課程でのCLTの教授不足が指摘されているが、本研究では教職課程での教授の解釈が個々の学生によって異なり、CLTを比較的深く理解する学生がいる一方で、浅薄な理解にとどまる学生や現実的に実現の難しい理想を抱く学生がいることが示された。次に、教員になった研究対象者が「現実」に直面し理想的自己に基づく実践の修正を迫られた際の反応の相違である。この相違には先述の教員以前のCLTの理解と関連性が見られた。最後に、「現実」の中で短期的な目標の修正をしつつ教員となった3人の参加者全てが長期的な理想的自己を保ちつつその実現のために更なる学びの必要性を感じ始めたことが挙げられる。以上の3点は、CLTを日本の教育文脈に即して実践できる英語教師を養成するための教職課程のあり方、また現職教員の養成システムのあり方について様々な示唆をもたらしている。
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