2013 Fiscal Year Research-status Report
独墺瑞三国における19世紀日本古写真と日本認識素材の復原的研究
Project/Area Number |
25370746
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷 昭佳 東京大学, 史料編纂所, 技術専門職員 (70532670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保谷 徹 東京大学, 史料編纂所, 教授 (60195518)
箱石 大 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60251477)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本史 / 史料学 / 古写真史料学 / 画像保存 |
Research Abstract |
幕末・明治初期=1860年代に日本へ派遣された3つの外交使節団(1860年プロイセン・オイレンブルグ使節・1863年スイス・アンベール使節・1869年オーストリア・ハンガリー帝国の特派使節)が収集した日本関係の古写真(写真史料)を中心に、写真史料の基軸標本となりうるコレクションの高精細デジタル画像の収集・撮影と解析による研究資源化を進めることを初年度の取り組みとし、以下の調査を行った。 オーストリアへ出張し、オーストリア国立図書館(ウィーン市)において、オーストリア・ハンガリー使節団写真家のブルガー日本関係写真コレクション及びウィーン万博関係写真アルバムを調査・撮影した。撮影データは、高精細画像、顕微鏡画像など計307カットであった。研究協力者であるボン大学ペーター・パンツァー名誉教授の協力を得た。 スイスへ出張し、ヌーシャテル民族誌学博物館(ヌーシャテル市)が所蔵する幕末のスイス使節エメ・アンベールのコレクションの調査・撮影・分析をおこなった。撮影データは、赤外線撮影、顕微鏡撮影データなど、188カットである。また、ヌーシャテル市文書館において、アンベール関係文書の調査・撮影をおこなった。撮影カット数は、154カット。さらにスイス国立文書館(ベルン市)において、ベアトアルバムの調査・赤外線撮影を行った。撮影数は20カットである。研究協力者であるジュリアン・グローザー学芸員の協力を得た。 ドイツ連邦に出張し、プロイセン枢密文書館(ベルリン市)において、オイレンブルグ使節団関係古写真の調査・技法鑑定用の撮影を行った。顕微鏡撮影データは179カットである。また、ベルリン国立図書館(同)において、日本関係古写真アルバムを調査した。シュヒテン・ブランデンシュタイン城において、シーボルト関係古写真の調査・撮影を行った。鳴滝塾のオリジナル写真など顕微鏡撮影データは、80カットである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目的である、1860年代に日本へ派遣された3つの外交使節団(1860年プロイセン・オイレンブルグ使節・1863年スイス・アンベール使節・1869年オーストリア・ハンガリー帝国の特派使節)が収集した日本関係の古写真(写真史料)・画像史料を対象に、出所・伝来が明確で撮影者や撮影状況、入手経路がはっきりするなど、写真史料の基軸標本となりうるコレクションの高精細デジタル画像の収集・撮影と解析を史料所蔵先に出向き着実に推し進めることができている。 当初計画に則して、①オーストリア国立図書館所蔵のオーストリア・ハンガリー帝国遠征隊随行写真家ブルガーが撮影・収集した、日本には殆ど現存しないオリジナルのコロジオンガラス湿板写真ネガ、②スイス・ヌーシャテル民族誌学博物館(ヌーシャテル市)が所蔵する幕末のスイス使節エメ・アンベールの日本からの持ち帰りコレクション、③ドイツ・プロイセン枢密文書館が所蔵するオイレンブルグ遠征隊が撮影した日本関係古写真コレクション、これら3つの在外コレクションを調査し、画像データをえている。初年度の研究課題として掲げた諸点について着実に研究成果を上げており、当初計画に即して順調に進展しいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果を踏まえて、本研究の二番目の目的である、3使節団が収集した古写真・画像史料コレクション加えて、関連するテキスト史料を併せて調査分析し、使節団が帰国後に報告用として作製したアルバムやイラストからなる画像資料集の解析を通じて、19世紀当時の日本認識を形づくった素材としての古写真・画像史料の復原的な研究に取り組む。 アンベール・コレクションに関しては、ヌーシャテル民族誌学博物館で条約締結150周年を記念して2014年に開催する特別展示公開へ協力しつつ研究成果の公開をはかる。その他の調査研究の成果は、東京大学附属画像史料解析センターのプロジェクトと連携した『画像史料解析センター通信』などを通じて随時発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究が調査・研究対象とする19世紀の写真技法であるウェット&ドライ・コロジオンネガティヴに関するワークショップが、次年度に日本で開催されることが決定したことを受け、ワークショップへの参加によりオーストリア・ハンガリー帝国使節団が使用したドライ・コロジオンネガティブの再現実験を試みることを計画したため。 次年度、条約締結150周年を記念してヌーシャテル民族誌学博物館において開催されるアンベールコレクションの特別展示公開へ協力し、研究成果の公表をはかるため。 本年度5月に開催されるウェット&ドライ・コロジオンネガティヴワークショップに参加し、オーストリア・ハンガリー帝国使節団メンバーであるモーザーが収集した「三井寺からの琵琶湖遠望」コロジオンネガティヴについて、同じ技法により同じ場所から撮影を試みる再現実証実験を行う。 次年度に開催が予定されているヌーシャテル民族誌学博物館におけるアンベールコレクションの特別展示公開へ協力し、研究成果の公表をはかるため、日本国内にある関連コレクションの追可調査を行う。
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Research Products
(5 results)