2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25370749
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹中 亨 大阪大学, 文学研究科, 教授 (90163427)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 明治日本 / 西洋音楽 / ワーグナー / 伊沢修二 / 幸田延 / ディトリヒ / 島崎赤太郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本在来の音楽とは異質の西洋芸術音楽は、それが幕末明治に流入したとき、日本人の間に強い拒否反応をひきおこした。それにもかかわらず、西洋が音楽はその後の150年間に、日本に定着していった。この音楽移転がなぜ迅速かつ有効に進行したのかという本研究の課題について、本研究の全期間を通じての研究作業の結果、以下のような結論を得た。 ①洋楽を手段化することで、それのもつ違和感を中和した。手段化の戦略としては、西洋型教育の不可欠の一部として提示する、明治国家を「文明国」として提示するなどが挙げられる。②洋楽家個人には、キリスト教との親和性において、「維新の敗者」に代替的な補償を与えた。③また、国家目標たる近代化に奉仕するという名目が作用する一方、立身出世の手段としても作用した。④世紀転換期以降では、明治社会の硬化に反発する学生世代に、その抗議申し立ての手段として役だった。こうした「上から」と「下から」の諸要因が複合的・相乗的に作用したことが、音楽移転を迅速にした理由と考えられる。 最終年度の研究成果としては、音楽を軸に日独関係を解明した“The Myth of “Familiar Germany”: German-Japanese Relationships in the Meiji Period Reexamined,”in Joanne Miyang Cho et al. (eds.), Transnational Encounters between Germany and JapanPalgrave Macmillan 2016,ならびに『明治のワーグナー・ブーム――近代日本の音楽移転』(中央公論新社、2016年4月刊行予定)がある。
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Research Products
(2 results)