2013 Fiscal Year Research-status Report
アムール川下流域で生産された装飾品及び外来交易品の周辺諸民族への波及に関する研究
Project/Area Number |
25370755
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
東 俊佑 北海道開拓記念館, 学芸部, 学芸員 (30370224)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 交流史 / 北海道史 / 北方諸民族 |
Research Abstract |
アムール川下流域に広く分布する金属製の飾り物と中国製絹織物の物質文化資料の調査により、これまで文献記録により形づくられてきた諸民族間の交易像をとらえ直すことを目的に、平成25年度は以下の(1)~(2)について具体的に調査を行った。 (1)申請者が平成24年度(研究実施前)に調査した金属製飾りと中国製絹織物を用いた衣服の写真データを整理し、サハリンや日本国内に残存する資料との比較検討を行った。検討対象とした写真は、ハバロフスク郷土博物館、及びコムソモリスク・ナ・アムーレ芸術博物館の収蔵品である。金属製飾りについて、サハリン北部ネクラソフカに残存しているものと比較したところ、形状や大きさが非常に類似していることがわかった。また中国製絹の布地を用いた衣服を綿密に分析したところ、さまざまな切れを継ぎはぎしているものがあり、そのなかに日本国内に残存する「蝦夷錦」の切れと共通しているものが含まれていることがわかった。 (2)前近代における諸民族の装飾品のあり方を把握するため、民族衣装が記された絵画資料の調査を函館市中央図書館、及び東京大学史料編纂所にて行い、《蝦夷島奇観》や《北夷分界余話》の挿し絵などとの比較を行った。函館市中央図書館では、19世紀初頭の会津藩のカラフト警備に関する《文化五年会津藩唐太出陣絵巻》及び《唐太嶋奇覧》の調査を行い、画像データを収集した。また東京大学史料編纂所では、幕末期の箱館奉行・村垣範正の蝦夷地巡視に関する《北蝦夷地図》《甲寅蝦夷巡撫図》《西蝦夷地図抄》の調査を行い、画像データを収集した。このなかで、《北蝦夷地図》に「白主会所山丹貿易之図」が所載されていることが新たに判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
職場の業務過多により、平成25年度に予定していたロシア・ハバロフスク調査を実施することができなかった。ハバロフスク郷土博物館には、金属製飾りの現物と資料カードが保存されており、それらを調査して現物を確認するとともに、カードの記載内容を翻訳し、詳細な目録データを作成することが本研究には必要な作業となるため、その調査を昨年度に実施できなかったことは、本研究の達成度としては、予定より1年ほど遅れていると言わざるを得ない。そのため標記のような評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、職場の業務過多の合間を縫って、無理をしてでもロシア・ハバロフスク調査を強行し、ハバロフスク郷土博物館所蔵の金属製飾りの現物、及び資料カードの調査を行い、詳細な目録データを作成する。できれば、当初の計画にあった平成26年度アムール川下流域の現地調査も、ハバロフスク調査と同時に行い、平成25年度の遅れを取り戻すことを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
職場の業務過多により、平成25年度に予定していたロシア・ハバロフスク調査を実施することができず、そのための海外出張旅費を消化することができなかったため。 職場の業務過多の合間を縫って、無理をしてでもロシア・ハバロフスク調査を強行し、ハバロフスク郷土博物館所蔵の金属製飾りの現物、及び資料カードの調査を行い、詳細な目録データを作成する。できれば、当初の計画にあった平成26年度アムール川下流域の現地調査も、ハバロフスク調査と同時に行い、平成25年度の遅れを取り戻すことを計画している。前年度未使用額は、拡充海外調査の実施により消化する予定である。
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