2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦後東北史の基礎的研究―〈東北〉論の検討を中心に―
Project/Area Number |
25370776
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河西 英通 広島大学, 文学研究科, 教授 (40177712)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 東北史 / 東北論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「戦後東北史の基礎的研究―〈東北〉論の検討を中心に―」は、東北=〈後進地〉という表象・言説が、戦後日本社会において再創造された戦後的物語であることを多角的に明らかにし、日本史像総体の脱構築をめざすために、平成25年度と平成26年度の二ヶ年は東北六県のローカルメディアを対象として〈東北〉論のありようを検討してきた。最終年度の平成27年度は、歴史学と密接な関係にある人文地理学分野における〈東北〉論の足跡を明らかにするため、『風土記日本』(1957~1960)『日本地理風俗大系』(1959)『図説日本文化地理大系』(1960~1963)『日本文化財大系』(1960~1966)『日本の地理』(1961~1962)など、とくに東北の後進地イメージが高まった1950年代後半から1960年代半ばにかけての出版物を分析し、同時代の講座・シリーズ類の日本史研究に見られた 〈東北〉論との比較をすすめた。 三カ年におよぶプロジェクトを通して明らかになった点は、第一に〈後進東北〉という戦後的物語が生産された主要時代として、高度経済成長期の意味が浮上してきた点である。この時代は全国的に労働力が農村部から都市部へ移動した時代である。その必然性・根拠として、最大の農村地帯であった東北社会の後進性が強調されたと考えられる。農村生活の価値を低め、都市生活の価値を高めるためには、後進地を特定し、先進地の優位を創出する必要があり、〈後進東北〉の創出とはそうした国家的機能の一環として位置づけられた。第二に従来すすめてきた明治維新期から敗戦までの〈東北〉論と、本研究における戦後〈東北〉論とを結合させることで、近現代日本史の新たな全体像の提示し、国民国家日本の形成過程史に新知見を与えることが可能になった点である。
|