2014 Fiscal Year Research-status Report
近世阿波における森林資源と地域社会に関する構造論的研究
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25370779
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
町田 哲 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60380135)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 森林資源 / 産物 / 林業 / 地域史 / 阿波 / 那賀川 / 生業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、阿波の山間地域を素材に、近世日本の森林資源をとりまく生業と流通の構造について、ⅰ山村における所有と生業の実態、ⅱ請負人による森林資源の利用実態、ⅲ森林資源をめぐる藩の支配関係という3つの地域史的資格から解明することにある。 2年目の本年度は、那賀川上流に位置する湯浅家文書の本格的調査に着手した。湯浅家は組頭庄屋(他藩にいう大庄屋)の家柄で、当該地域の林業や諸産物の取締にも関わった家である。上記ⅰ~ⅲすべてに関わる内容を含んでおり、山間地域だけでなく、流域地域における森林資源の維持・展開をめぐる地域社会の変化を知る上で、またとない史料群である。現在、調査整理作業を継続しておこなっているが、初年度に調査し翻刻作業中の『阿波藩林政資料綴』の分析とあわせることで、地域を総合的に把握する可能性を広げることができた。 一方、研究成果としては、①拙稿「近世後期徳島藩における御林の分布と構造」(『鳴門教育大学研究紀要』30、2015年3月13日、341-365頁、単著)、および②拙稿「仁宇谷産物趣法に関する基礎的考察」(『阿波学会紀要』60、2015年3月1日、217-223頁、単著)を公表した。①では、徳島藩領における御林の分布とその特徴について、国絵図および「御林成行書」をもとに明らかにしたもので、特に那賀川上中流域を中心に材木伐出が可能な主要御林が展開していること、一方で吉野川流域にも御林が点在するが、19世紀の段階では松等が中心であったことを解明した。あわせて「御林成行書」の全文を翻刻公開した。②では天保期から実施された藩による山の産物の流通統制である「仁宇谷産物趣法」の特徴を、その成立期に絞って考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画予定どおり、那賀川上流に位置する湯浅家文書の本格的調査に着手することができた。従来、当該地域における近世の林業分析・地域分析でも、湯浅家文書のごく一部は利用されていたが、その全容は不明のままであった。本文書群には、とくに木頭地域から産出する茶・楮・炭などの流通統制に関する史料や、材木・炭生産に関する多くの争論関係史料が含まれている。本年度は、この半分について現状記録調査をすすめることができた。 また上記論文を公表できたほか、上記一時史料を手がかりに、森林資源ごとの流通実態や地域社会との連動についても分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度以来継続している「阿波藩林政資料綴」の翻刻作業を進め、史料集づくりにむけて前進させる。また、2年度以来継続している湯浅家文書の調査整理作業を継続し、全点写真撮影を実施していく。ただし、湯浅家文書は、計画段階の見込みよりも膨大な分量であることが判明している。調査補助員を活用しつつ、計画的に作業を進め、地域の重要な歴史文化遺産として十分に保全しつつ、広く研究活動にいかしていきたい。 その上で、同時並行的に①②分析を進め、阿波「林業地帯」の本丸とでもいうべき那賀川上流地域の森林資源と流通の実態を、茶・楮・炭などのモノごとに解明し、それをとりまく地域社会構造の展開を総合的に検討する。
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Research Products
(3 results)