2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370781
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂上 康俊 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (30162275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 集落遺跡 / 古代中世移行期 / 福岡市 / 公営田 |
Outline of Annual Research Achievements |
弥生時代以来集落が営まれている福岡市域における集落の消長について、福岡市文化財発掘調査報告書1200冊以上を通覧し、12世紀に到るまでの集落遺跡消長表をエクセルファイルで作成した。これには水田跡や窯跡等の生産遺構についての情報も盛り込まれており、消長の原因について検討する手がかりとなるはずである。併せて屋代遺跡群や村上遺跡等の関東・甲信越の著名な遺跡における集落遺跡の消長を再検討し、全国的な趨勢について、概観を得た。従来から言われているように、東国における律令期集落は10世紀に入る頃には激減するが、北部九州においては、9世紀前期に激減し、同じ立地では12世紀ころから再開発が始まることが確認された。この現象の背景については、考古学的な検出方法の抱える問題点、たとえば竪穴住居の消滅や土器から木器等の残存しにくい素材への食器の変化なども絡むであろうし、また、灌漑施設の技術的な発達といった要因による沖積地への進出といったことも絡むと思われるが、むしろ北部九州に関しては、文献資料に現れる弘仁・承和期の飢饉や、遺跡面に検出できる水害の痕跡など、災害史・気候史、疾病史に背景を探る方が有効ではないかとの感触を得ている。これは、いわゆる公営田制施行の背景としても考慮されなければならないだろう。 こういった成果を国立歴史民俗博物館における研究会で披露し、諸専門分野からの有益な意見を頂戴した。また、2回にわたる日本史研究会準備検討会での討論にも上記資料が提供され、2015年3月例会においては、佐藤泰弘・小原嘉記両氏の報告に対するコメントの形で、今後の平安時代村落社会史の方法的課題について報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
福岡市の発掘調査報告書の悉皆調査に思いのほか手間取り、これを平安時代の文献資料と対比させて考えることが十分にはできていない。また、全国的な趨勢についても、サンプル数が予定より少なく、更に現地調査に時間が割けなかった。また、これまでの研究成果を刊行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
久留米市の文化財発掘調査報告書の悉皆調査により、国府所在地での集落の消長の把握を、更に宮崎県・鹿児島県の集落遺跡の消長を、それぞれの地域の発掘調査報告書によって把握する。これは、南九州と北部九州とで集落の消長の時期が異なるとする説を検証することを兼ね、併せて平安時代の開発の前提条件を確定することにつながる。さらには地球科学的な研究の成果を取り入れ、集落の消長に関する一般的説明を試みる。もちろん全国的なサンプル調査についても、鋭意収集に努め、できるだけ現地の情報を集めていく。 これらの結果は、中間報告として吉川弘文館から刊行される予定の『摂関政治と地方社会』の中に盛り込まれる予定である。
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