2014 Fiscal Year Research-status Report
東アジア新秩序形成と日・英米対立構造の研究―日米開戦経緯の再検証―
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25370793
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 元英 中央大学, 文学部, 教授 (70276450)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日米交渉 / 近衛文麿 / マジック文書 / イギリス国立公文書館 / 昭和天皇実録 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、第二次及び第三次近衛内閣期の日米交渉に関し、アメリカ側の暗号解読文書、”Collection of Japanese Diplomatic Message”と日本外務省記録とを比較して、日独伊三国同盟、中国からの撤兵、貿易通商自由化の3問題に焦点を当てて調査した。その過程でアメリカ側は、イギリスと連絡を取り合いながら、日本の南進政策、とくに日本のタイ及び仏印に対する軍事政策に強く警戒していることがわかった。日本タイ軍事協定の情報をつかもうとしている新たな事実を発見できた。 2、イギリス国立公文書館でのイギリス外務省記録調査、とくにマレーシア、タイ、アメリカ関係の文書を調査し、重要文書を写真撮影した。分析の途中ではあるが、タイとの不可侵条約締結の過程がわかり、対日軍事提携を希望している動きもつかむことができた。また、英米関係において、マレーシアに両国の外交的、軍事的任務を帯びた両国のスタッフが会合を持ち、対日政戦略を練っている事実も確認できた。 3、京都陽明文庫調査では、期待した第四次近衛内閣組閣構想に関する資料を発見することはできなかった。近衛日記も、すでに活字化されたもの以外には存在しないことがわかった。ただし、山本有三が集めた近衛文麿関係資料が、未整理のまま所蔵されていたので、後日の調査の対象とする必要が生じた。 4、「昭和天皇実録」が宮内庁書陵部において公開したので、太平洋戦争の開戦経緯の部分を入手し、調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、アメリカのマジック文書は大量にあり、その中で太平洋戦争の開戦経緯についてはおおむね重要文書を分析したが、終戦経緯の部分が残されており、最終研究成果に反映できるようスピードを上げる必要がある。 2、イギリス外務省文書によって、英米間の日本に関する情報共有状態がよく理解でき、日本のタイ、仏印戦略について危機意識を抱いていたこと、とくに日タイ軍事協定の情報がアメリカの開戦決断に繋がったという、新たな主張の可能性を見出すことができた。 3、「昭和天皇実録」の新資料を入手できたので、当該研究が非常にやりやすくなった。天皇への上奏、閣議決定及び大本営政府連絡会議決定に関する天皇の裁可の時系列的状況について、明確に辿れることができるようになったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
1、マレーシア国立公文書館及びイギリス国立公文書館において、イギリスのマレーシア・シンガポール防衛関係資料を調査する。これによって、日本が中立国タイに接近し、南進政戦略を一段と強化しなければならなかっ理由について考察する。また、そのことは同時に、アメリカは対日戦争を、何時、何故決意したかの問いに答えることにもなる。 2、日本の資源獲得構想と東南アジアの対日反応について、開戦前及び開戦後の情況を調査する。そのために、東南アジア諸国の経済的統計情報を入手する。 3、タイ・マレーシア関係を調査し、日米開戦の真珠湾攻撃と対英開戦のコタバル攻撃を比較研究する。無通告開戦の実態を証明するためである。外交文書等によっては、研究報告が纏まりつつあるが、シンゴラ・コタバルの現地調査を行ってより実証性を高める。 4、日本の終戦過程について、東南アジア諸国がどのように観察していたか、資料・文献をできるだけ収集する。アジア太平洋戦争の原因と戦後国際関係について、東南アジアの視座から問い直すためである。
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Causes of Carryover |
アメリカ国会図書館撮影日本外交文書(1941‐1945年)のマイクロフィルムからのプリント作成に時間を要し、2014年度中に終了しなかったため、支払いを延期したことによって生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年6月末にはプリント作成が完了するので、直ちに支払手続きをする予定である。この資料は日本外務省に返還されなかった特殊文書群である。アメリカのマジック文書と対応させながら使用する資料であるので、なるべく早く入手したい。
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Research Products
(2 results)