2015 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア新秩序形成と日・英米対立構造の研究―日米開戦経緯の再検証―
Project/Area Number |
25370793
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 元英 中央大学, 文学部, 教授 (70276450)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日米交渉 / 東条英機 / 日タイ軍事同盟 / マレー開戦 / 経済制裁 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、マレーシア国立公文書館(クアラルンプール)において、イギリス統治時代の対日関係資料の調査、収集を行った。日本軍が仏印に進駐し、さらに日タイ軍事同盟構想を強行しようとしたとき、イギリスはアメリカに働きかけ、マレーシア・ビルマの防衛軍備を強化しようとした事実の確証を得た。そこで、日本が真珠湾攻撃を決意する大きな要因になったことに、英米の対日戦争準備があったことを主張できる根拠を導き出すことができた。 また、マラヤ大学人文社会科学部教授シャーマニ・パトリシア・ガブリエル博士の協力を得て大学図書館・資料室の利用が許され、かつ研究のアドバイスを受けることができ、Andrew Barber “Kuala Lumpur at War 1939-1945” など太平洋戦争勃発に関する貴重な文献を入手することができた。 2、イギリス国立公文書館(ロンドン)において、イギリス外務省のアメリカ・日本・マレーシア・ビルマ・タイ関係資料調査を行い、1936年から1945年までのデータ・ベース化の作業を行った。イギリスの外務省文書からも、英米連携による対日戦争準備が、日独伊三国同盟締結前後から強化しようとする動きが見られ、日本の戦争決断の要因に大きく関わっていることが認められた。 3、太平洋戦争の開戦経緯について、東アジアからの視点から問い直す作業を行ったが、ポツダム宣言作成過程に表われたアメリカとイギリスの協力関係を、第二次大戦勃発からという長いスパンで考える必要があると確信することができた。調査した資料によって、戦後顕著となる冷戦の構図が1945年初期には見られることを突き止めた。日本の終戦決意を遅らせた原因に、東欧支配をめぐるソ連と英米の対立、つまり冷戦の構図を利用しようとする、日本の政府・軍部の考えがあったことの仮説を補強することができた。
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Research Products
(2 results)