2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370794
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
白根 靖大 中央大学, 文学部, 教授 (80250653)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中世 / 系譜史料 / 系図 / 宮内庁書陵部 / 東京大学史料編纂所 |
Research Abstract |
本研究は、中世系譜史料の事例研究を積み重ね、個別事例の体系化を図ることによって、中世史料学の進展に寄与しようとするものである。また、系譜史料の史料的価値を高める方法論を構築することを通し、史料的制約を抱える分野の一つである東北地域史研究において、系譜史料の活用を広げることを目指す。 今年度は公家系譜史料の事例研究を進めた。対象としたのは、東京大学史料編纂所と宮内庁書陵部に所蔵されている公家系譜史料である。史料調査を通してこれまで研究対象とされてこなかった系図を選び、史料収集した系図について作成時期の解明といった基礎的な分析から始めた。その結果、中世に作成された系図の作成時期は室町~戦国期が主であること、近世に作成された系図でもその原形が中世に遡るものがあることが明らかになった。また、「三条西家系図」等の家系図、「藤原氏系図」等の氏系図、「古系図集」「諸家系図」等と題する系図集があり、本研究における系譜史料の分類の有効性を確認した。 注目できるのが、宮内庁書陵部所蔵「源氏諸流系図」と東京大学史料編纂所所蔵「古系図集」の共通性で、現所蔵者や所収史料群が異なる両系図集は、公家系譜史料の作成・相伝・伝播等の実態に迫り得る事例と言える。他にも所収史料群の異なる「藤原氏系図」等、比較検討を深めるべき系譜史料を収集することができた。 一方で、東北地方における歴史資料保全活動の調査を行った。この活動が新出史料を発見した例があり、系譜史料についてもその可能性を探る価値があるからである。具体的には、宮城歴史資料保全ネットワークを訪れ、保全活動の現状と保全された史料群について調査した。その結果、震災の影響の大きさから、全貌をとらえるには次年度以降も継続して調査する必要があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京大学史料編纂所と宮内庁書陵部における史料調査および史料収集が滞りなく進んだ。両機関に所蔵されている多数の公家系譜史料の中から、本研究の対象としてふさわしい系図を選び、それらをカラー写真で収集することができた。また、基礎的な分析の結果、事例研究の蓄積に寄与する系図のほか、個別事例の体系化につながり得る系図集同士の関係性を見出すことができた。 なお、収集した史料には系図の紙背文書も含まれており、系譜史料作成の歴史的背景を探る素材も入手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度収集した公家系譜史料の比較検討をさらに深め、個別事例の体系化につながる手掛かりを増やす。また、系図の紙背文書を分析し、系譜史料作成の歴史的背景等、付随する史実の発見に努める。 次年度から始める作業として、東北地方に現存する系譜史料の原本調査および史料収集を進める。既知の系譜史料ではあるが、その原形が中世公家系譜史料につながる可能性のあるものが含まれており、こうした視座からの研究は進んでいないのが現状である。本研究によって、これらの系譜史料が中世系譜史料研究の対象としてクローズアップされることになる。 一方で、宮城歴史資料保全ネットワークにおける歴史資料保全活動の調査を継続して進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
史料収集にあたり、公家系譜史料の写真撮影という形で複写を史料所蔵機関に申請したところ、系図本体のみならず紙背文書についても写真撮影が可能となった。そのため、写真撮影・現像・焼き付けを委託した業者による作業期間が延び、請求金額も増えた結果、まとめて納品された時点で今年度分の残額を超える額になった。ゆえに、次年度分の助成金とあわせて支払いをすることにした。 上述の写真撮影・現像・焼き付けに関する業務委託費として使用する。
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