2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370795
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
横山 百合子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (20458657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧原 成征 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (20375520)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遊廓 / 吉原細見 / 遊女 / 寺社名目金貸付 / 芸娼妓解放令 / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
第2年度である平成26年度は、当初計画していた坂本家文書調査が初年度で終了したことをうけて、①全研究期間を通して行う計画であった「吉原細見」の所在調査のペースをあげる、②課題達成のための補助的作業として、遊女や飯盛女の流通にかかわる街道・宿場関係史料に調査範囲を広げる、の2点を計画に追加し実施した。①については、東京都立中央図書館、国立国会図書館のほか、台東区立中央図書館所蔵の細見類の確認と一部の複写を行った。また、新たに愛知県西尾市岩瀬文庫の調査を二度にわたって行い、史料の収集に成果を上げた。②については、新潟県立文書館、長岡市立図書館互尊文庫史料の調査に着手したが、研究課題に適する史料の発掘には至っていない。そのため、27年度においては、当初の計画に加え、細見類の調査を引き続き行うと同時に、江戸―越後の間に展開した性売買をめぐる旅籠屋、飯盛女、女衒等の動向をうかがう史料の発掘に努めたい。 成果の発表という点では、26年度に予定していた研究代表者による遊廓をテーマとする単著刊行がやや遅れをみているが、研究代表者の編集による『講座明治維新第9巻 明治維新と女性』が刊行され、代表者著「総論」「幕末維新期の社会と性売買の変容」において、「生命の生産と再生産」の視点から明治維新史研究における遊廓研究の意義を論じた。また、同著「新吉原における「遊廓社会」と遊女の歴史的性格―寺社名目金貸付と北信豪農の関わりに注目して―」(『部落問題研究』209)において初年度の調査研究の成果を発表した。このほか、研究代表者、研究分担者がそれぞれ関連する学会報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全体として、研究は、極めて順調に進行している。特に、本研究の課題である(1)”生命の生産”の畸形化された一形態としての遊廓の構造を、遊女と遊廓社会との矛盾・対抗に着目し、遊女を買う男の側も視野に入れて明らかにすること、(2) 近世における遊廓を支える社会的基盤を、農村に着目しつつ解明すること、の2点のうち、(2)については、第2年度までに、対象とする長野県須坂市・中野市地域の調査をほぼ終了し、その分析結果を発表し課題を達成することができた。(1)については、『講座明治維新第9巻 明治維新と女性』においてその大まかな見通しを述べたものの、さらに細部にわたる調査と分析が必要な段階である。この点を最終年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年次までの研究成果を踏まえ、本年は、計画全体を総括し、本研究の課題である遊廓の構造分析の深化に力を注ぐ。また、その成果を研究代表者による単著として発表することをめざす。そのため、当初の計画に加え、補助的史料収集をさらに進めるとともに、それらについての考察をふまえ、近世性売買の実態の解明による” ジェンダーの視点からの近世史研究”の実践をめざしたい。
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