2015 Fiscal Year Annual Research Report
幕末維新期儒者たちの動向―木下イ(韋+華)村日記をてがかりとして―
Project/Area Number |
25370799
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
島 善高 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60187424)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 木下イ(華+韋)村 / 時習館 / 菊池 / 安井息軒 / 塩谷宕陰 / 文会 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続いて「木下イ(華+韋)村日記」の解読及び翻刻に大部分の時間を当てた。時代的には天保・弘化期が中心であるが、その頃、木下イ(華+韋)村は江戸において安井息軒や塩谷宕陰らと『周礼』の研究会を行っていた。他方、久留米水天宮の神官眞木和泉守は水戸の会沢正志斎の影響を受けて、やはり『周礼』に関心を持っており、会沢を訪ねた後、江戸で安井や塩谷と親しく交わった。さらに眞木は木下イ(華+韋)村の弟小太郎と近しくなり、木下イ(華+韋)村の故郷である熊本の菊池を訪ねている。そこで木下と眞木の繋がりを確認するため、たびたび久留米水天宮に出張し、眞木の蔵書を調査した。その過程で、眞木は隣の佐賀藩の学者枝吉神陽の門下生らと交流があることも判明したので、佐賀県立図書館にも何度か足を運び、枝吉神陽とその門下生の言動を追及した。そうしたところ、枝吉神陽及び従弟島義勇は江戸に留学した際に、木下イ(華+韋)村をしばしば訪ねており、後には熊本にも出かけて熊本帰省中の木下と面会していることも明らかとなった。このように、幕末期儒者たちの交流範囲は、想像以上に広かったことが分かった。今回の研究期間内では約10年分の日記しか翻刻できなかったが、残り10年分を解読すれば、数多くの新知見を得ることは間違いない。 なお、今回の研究の副産物として、木下の出身地熊本県菊池市の様子が随分と明らかになってきたことを挙げなければならない。従来の熊本の歴史において、熊本藩士の動向はかなり明らかになっているが、菊池などに住んでいる在御家人については不明な点が多かった。ところが木下の日記には菊池在住の在御家人の動向が詳細に記録されており、菊池市史にとってのみならず、熊本県史全体に多くの新たな情報を提供してくれよう。
|
Research Products
(7 results)