2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370804
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
鈴木 康子 花園大学, 文学部, 教授 (00281501)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 末吉摂津守利隆 / 置付用意銀 / 金銀輸入 / 田沼意次 / 松平定信 / 一橋治済 / 長崎目付 / 天明年間 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に天明前期の長崎奉行戸田出雲守氏孟の貿易政策に焦点をあてたが、今年度は、戸田の急死後の長崎を建て直すべく末吉摂津守利隆が長崎奉行に着任した状況について明らかにした。末吉は、まず長崎奉行着任の前年に長崎目付として長崎に滞在した。そして、その翌年に長崎奉行となり、長崎貿易から長崎地下人の統制・救済を目途とした新たな諸政策政策を実施した。その政策とは、正徳新例の遵守、金銀輸入と御国益とのバランス、長崎の住民の救済のための(置付)用意銀制度の再置、そして戸田出雲守(~1785年まで長崎奉行)によって実施された政策の見直しなどである。さらに、戸田は田沼政権下での長崎奉行であったが、末吉は松平定信政権下での長崎奉行であり、その才能と経験によって、長崎の統制と長崎貿易の円滑化が期待されていた。しかし、末吉は在任わずか一年ほどで辞職した。この失脚の背景について、『よしの冊子』を中心に考察を加えた。これについては、11月に「天明後期の長崎情勢と長崎奉行末吉摂津守利隆」と題する論文を発表した。 また、8月にオランダのライデンとイギリスのロンドンにおいてフェートン号事件についての史料調査を行った。そして2月には長崎歴史文化博物館、3月には平戸の松浦史料博物館において、長崎奉行関係史料を中心に閲覧・撮影を行った。 その一方で10月以降は、これまで撮影してきた史料の整理を行い主要な史料について複写作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
天明期の飢饉やオランダ船が来航しなかったことによる長崎貿易の混乱により、それまでよりもさらに現況に見合った政策への転換が必要となった。そのため、この時期には新たな諸政策が実施された。そのうえ、この時期は政権が田沼意次から松平定信に変わる過渡期にあたり、江戸と長崎の動向をさまざまな史料・文献から検討を加える必要があったため、予定より大幅に時間がかかってしまった。 また、史料調査では、1750年代から幕末までの長崎奉行関係史料を中心に進めていたため、史料の整理に時間が多くの時間が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の1月頃から寛政の改革(1789年~)における長崎貿易政策と長崎奉行の動向について検討している。調査していく中で、この改革は幕末までの幕府の対外政策の基調をなすものであることが明確となった。従って、この改革について十分検討を加えて、それ以後から19世紀中期にいたるまでの幕末の長崎奉行研究を進めていくことが絶対的に必要であることが、研究をしていく中でわかってきた。 そのため本年度は、この寛政の改革前後の状況と、その内容、それに対する幕府の政策と長崎奉行の施政、長崎市民の動きなどについて検討を加えたい。そして1800年代へと研究を進めていきたい。 また、「長崎奉行交代控」(長崎歴史文化博物館所蔵)を活字化する作業を開始する。これにより、幕末に至るまでの個々の長崎奉行の詳細が明らかとなる。
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Causes of Carryover |
昨年度に予定していた海外史料調査を今年度に行ったため、支出は多くなった。それでも今年度の予定額より決算が20万円ほど下回ったのは、海外出張費が予定よりも滞在期間が短かったこともあり予定額よりも安価となったこと、また予定していた製本作業に入っていないために予算が残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、これまでの史料調査で撮影してきた史料の整理・複写をする。そして12月から3月の期間に長崎・熊本への史料調査を実施する予定である。
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Research Products
(1 results)