2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の植民地における自然災害と防災についての研究
Project/Area Number |
25370806
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 有恒 立命館大学, 文学部, 教授 (00262056)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植民地 / 水害 / 火災 / 火田民 / 斎藤実 / 間島 / 満州 / 友邦協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本の植民地統治下にあった朝鮮半島を対象とし、そこで発生した自然災害の実態を解明しつつ、それへの植民地官僚たちの対応を明らかにすることで、①近代日本の防災対応の結論部分を確認するとともに、②それがことなる歴史的社会背景を持つ異文化社会において十分には機能しえなかったことを明らかにし、③そうした予想外の事態の中で官僚たちがどのような対応を行ったのかを検討、④それが結果的にトランスナショナルな問題に発展していったこと、⑤その延長線上に満州事変が存在していたことを指摘したものである。 朝鮮半島においては既存の社会の範囲外に火田民という人々が多数存在し、それが山林への放火による焼き畑農業を行っていたため、山林のほとんどがはげ山化していたこと、そうした山林は保水力が弱く、降雨時には大規模な水害が発生し、それは植民地官僚の予想を超える被害をもたらしたこと、その対応として火田民への授産、農民化を求めたことが総督府内外の批判を買ったこと、さらに彼らの同族が住む中国間島地方の問題ともリンクし、引くに引けなくなった総督府は、その機密費を投じて越境対応を試み、それは外交問題へと発展して最終的に満州事変の大きな背景となることなどが、本研究で明らかとなった成果である。 この問題は現代でも話題となる、技術の国際的貢献・移転問題の端緒となった事件であり、異文化社会への技術転用にはリスクが伴うこと、その安定的運用のためにはその社会の歴史的背景までもを理解したうえで、慎重に対応することが必要となること、日本の植民地官僚たちはあえてこの問題に深く対処していったこと、そしてそれが歴史的混乱の大きな背景となっていったことが浮かび上がってきた。 今後は他の植民地における事例も検討し、より大きな視点から「近代日本の植民地支配がもたらしたものは何だったのか?」を問わねばならないと思わされた。
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Research Products
(2 results)